研究課題/領域番号 |
13J04919
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
水上 圭二郎 鹿児島大学, 共同獣医学部, 特別研究員(PD)
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キーワード | 遺伝子病 / 純血犬種 / フェレット / 成犬型運動失調症 / 神経セロイドリポフスチン症 |
研究概要 |
本研究は、動物遺伝子病の原因を解明し、その原因変異に対する検査法の開発および分子疫学調査を実施することを目的として実施した。具体的には、トイ・プードルの成犬型運動失調症とチワワおよびフェレットの神経セロイドリポフスチン症(NCL)の3つの常染色体性劣性遺伝子病を対象とした。 トイ・プードルの成犬型運動失調症に対しては、現在の位置的クローニングの手法の主流であるゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施し、特定の領域に変異が存在する可能性が高いことが示されたため、その領域に存在する2つの遺伝子のコード領域およびその隣接領域の塩基配列を調べた。その結果、複数の変異候補が存在することが確認された。しかし、これらの候補変異をバイオインフォマティクス解析し、さらに全ての疾患犬と数十頭の健常犬の遺伝子型を調査した結果、これらの変異候補が病原性変異ではないことが示された。また、同時に発現解析も行ったが、明らかな発現の変化を示す遺伝子は同領域には認められなかった。また、グロボイド細胞性白質ジストロフィーの原因酵素をコードしているGALC遺伝子に対しても変異探索を実施したが、この遺伝子においても病原性変異の存在は確認できなかった。チワワのNCLに対しては、過去の研究にて解明された組織病理学的特徴を基に、NCLの原因となりうる遺伝子の中から5種類について、これらの遺伝子のコード領域とその隣接領域の塩基配列を調査した。その結果、各遺伝子に複数の多型を発見したものの、疾患の直接的原因となりうるような重大な変異は存在しないことが分かった。フェレットのNCLに関しては、現在PTTl遺伝子の解析を実施中である。 以上のように、いずれの疾患に関しても現時点では病原性変異を発見するには至っていないが、多くの遺伝子が削除されて候補を絞り込むことができた。また、新たな症例を加えて、再度GWASを実施して新たな候補遺伝子を検索する必要性も浮上した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度計画どおり、トイ・プードルの成犬型運動失調症は、ゲノムワイド関連解析(GWAS)の結果を基に選別した候補遺伝子の解析を実施し、チワワとフェレットのNCLについては多くの候補遺伝子を解析した。しかし、現時点では、いずれの疾患も病原性変異を同定するに至っていない。ただし、多くの遺伝子候補を消去することができたため、次年度で調査する遺伝子を絞り込むことが可能となった。GWASに使用した症例およびコントロールのサンプル数が少なかったか、もしくはサンプルの選別が不適切であったことにより、正確な統計学的な解析を行うことができなかったことが主要な要因であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は引き続き、対象となる3疾患について病原性変異の探索を実施する予定である。具体的には、トイ・プードルの成犬型運動失調症に対しては、症例数を増やして再度ゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施する予定である。チワワの神経セロイドリポフスチン症(NCL)に対しては、これ以上機能的クローニングによる疾患関連遺伝子を探索するには限界があるため、既存の症例を用いてGWASを実施し、候補遺伝子を絞り込む予定である。フェレットのNCLに対しては、PTTI (CLNI)遺伝子およびCTSD (CLN10)遺伝子の解析を実施する予定である。変異が発見された場合は、さらに遺伝子型検査法開発および分子疫学調査を実施する。
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