研究課題/領域番号 |
13J04923
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
榛葉 健太 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 電気刺激 / 微細加工 |
研究実績の概要 |
本研究では,再生医療への応用を目指し,多能性幹細胞の精密分化誘導法の開発を目的としている.未分化状態のiPS細胞に対して,従来用いられてきた薬理的な手法ではなく,電気刺激や磁気刺激といった物理的な刺激を印加することにより,特定の細胞種まで精密に分化誘導することを目指している.研究の2年目に当たる本年度は,前年度に確立した手法を用いて培養した未分化iPS細胞およびiPS細胞由来神経細胞の評価を行った.それぞれの項目の実施状況について詳細を述べる. 1.未分化状態のヒトiPS細胞におけるCa振動の評価.本年度は,細胞周期と細胞内Caイオン濃度に着目した.細胞周期に着目した理由は,多能性幹細胞は細胞周期に応じて,外部刺激に対する応答が変化し,分化方向が変化するためである.また,細胞内Caイオン濃度は外部刺激による制御が容易であるため,制御法を確立するに当たっても適切なターゲットとなることが期待される.蛍光観察法および画像処理手法により,未分化状態iPS細胞のコロニーから,1000個以上の細胞の活動を同時取得し,個々の細胞の細胞周期のステージとCa振動を評価した.結果,ヒトのiPS細胞においても,マウスES細胞において報告されているCa振動が起こることが確認された.また,細胞周期との関連性を評価した結果,細胞周期のステージによってCa振動の頻度が変化することが示唆された. 2.ヒトiPS細胞由来の神経細胞の評価.ヒトiPS細胞から分化誘導した神経細胞が機能を獲得したことを確認するため,微小電極アレイ法により,自発活動の計測を行った.分化誘導50日目から10日おきに計測したところ,およそ90日目から神経回路網が形成されたことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は,昨年度開発したコア技術を活かし,未分化状態および神経分化した細胞の機能評価を行った.結果,それぞれの段階において,評価に有用な指標が抽出できることがわかった.今後,これらの指標をもとに,細胞の状態の推定や制御を行うことで,興味深い研究成果が得られることが期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた指標をもとに,分化の各段階における細胞の機能評価を継続する.さらに,外部刺激を用いて,未分化状態のiPS細胞に関してはCa振動を,iPS細胞由来の神経細胞に関しては自発活動を調節し,細胞が自発的に持っているリズムを乱すことが細胞の機能発現に与える影響を評価する.
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