研究課題/領域番号 |
13J04927
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中田 陽介 京都大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | メタマテリアル / カゴメ格子 / 双対回路 / メタ表面 / 自己補対 |
研究概要 |
本研究は、(1)マイクロ波領域で応答を示す金属カゴメ格子による電磁波の閉じ込め効果の検証、および、(2)空隙の電圧・磁束を下にした回路モデルの確立の二つを目的としている。(1)に関連して初年度は測定に向けた準備を行った。まず、金属カゴメ格子の作製に取り掛かった。金属カゴメ格子を作製するにあたって、銀ナノ粒子インクを充填したインクジェットプリンタを利用した。次に、作製した格子の特性を取得するために、マイクロ波帯で動作する近接場プローブを準備し、測定系を構築した。 (2)に関しては、空隙の電圧・磁束を未知数とする積分方程式を、微分形式を用いて定式化した。次に、Whitney形式を用い、de Rham法、Galerkin法の2つの手法によって、積分方程式から回路方程式を得た。さらに、2次元金属構造Aと、Aの金属部分と空隙を入れ替えて得られる構造Bの回路モデルの比較を行った。Aに対しては、通常の電流・電荷ベースのモデルを採用し、Bには電圧・磁束モデルを用いた。この結果、A, Bそれぞれのモデルが双対回路として関連しあっていることが明らかになった。 さらに本研究を発展させるため、金属部分と空隙部分の入れ替えに対して、形を変えないような2次元構造体(自己補対メタ表面)の電磁応答を理論的に考察した。その結果、円偏光の基本波に対し、自己補対メタ表面の複素振幅透過率と反射率が全周波数で1/2になることを電磁理論的に証明した。また、こうした特異な性質をシミュレーションによっても確認している。さらに、3回以上の回転対称性を持つ自己補対メタ表面は、両側から電磁波の入射に対し、電磁波を完全吸収することも示した。このため, 自己補対メタ表面は完全吸収体として利用できる。また、広帯域に効率的な吸収を起こすため、非線形現象の増強効果も期待される。こうした特性は、電磁場と構造の対称性が調和した結果であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の目標であった金属カゴメ格子の作製と測定系の構築を完了した。また、空隙の電圧・磁束を基本変数とした基礎理論も順調に進展し、Babinetの原理と双対回路との関連を明らかにできた。さらに、研究を発展させ、自己補対メタ表面の特異な特性を明らかにできたことは、当初の研究計画以上の成果である。
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今後の研究の推進方策 |
2年度目はカゴメ格子の時間領域における特性測定を進める。このとき、申請時に考えていた形状の格子をそのまま用いるだけではフラットバンドモードが励振できない場合は、励振源、および、構造の一方を工夫し、測定を進める予定である。さらに、本研究を発展させ、カゴメ格子のバンド構造が他の格子構造とどのように関連するかについて、理論・シミュレーション・実験を駆使して探っていく。 自己補対メタ表面に関しては、その特異な応答を実験的に示すことが次の課題である。これまで、共同研究者とともに実験を進め、その兆候をつかんでいる。これから実験をさらに進めた後に、共同研究者とともに論文を作成していく。
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