研究課題/領域番号 |
13J04930
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
村上 慎之介 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 温泉 / 飲泉 / 細菌叢解析 / メタボローム解析 / 代謝物 / 健康 / 腸内細菌 |
研究概要 |
本研究では温泉が人体へ与える影響(いわゆる「効能」)を科学的に解明することを目的として実施したものである。これまでに報告されている「効能」は疫学的調査や経験、体験に基づくものがほとんどで、疾患が改善するメカニズムについては大部分が未解明のままである。日本において温泉は浴用に用いられることが多いが、世界的に見れば温泉は入浴だけでなく飲用に用いる揚合も多い。当初は入浴による影響を評価する実験系のみを検討していたが、入浴と飲泉の両面から温泉が人体へ与える影響を評価したいと考え、平成25年度にはまず飲用試験の予備実験を実施した。飲泉による影響を評価するため1名のボランティアに対し、4週間に渡る試験を行った。1週目と3週目には水道水を、2週目と4週目には温泉水を、それぞれ毎食前(1日3回)に200ml飲用した。飲泉を行うことで人体には様々な変化が生じると予想されるため、1日おきに糞便、血液、尿を採取し、糞便中の細菌叢解析と血液および尿中のメタボローム解析を実施した。温泉水は山形県内の温泉地から購入したものを用いた。分析の結果、温泉水飲用期間中において有意に増減する細菌や代謝物を見出すことができたため、これらが飲泉の「効能」に寄与している可能性があると考えられた。これらの結果を受け、平成26年度には多くのボランティアを募り、規模を拡大した実験を実施したいと考えている。そのため、平成25年度には2ヶ所の温泉地を訪問し、本試験への協力を依頼して合意を得た。平成26年度初頭にもさらに1ヶ所追加で訪問予定である。また、本研究は一般財団法人日本健康開発財団、およびその下部組織である温泉医科学研究所に多大なご協力を頂いており、今後も共同で調査を実施していくことにしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り本年度は小規模な予備実験を実施し、評価系を構築した。計画段階では浴用に対する効能の評価のみを検討していたが、温泉の効能を理解するためには飲用に対する効能の評価も重要であると考えたため、一部研究計画の修正を行った。また、温泉水を用いて大規模な調査を行うためには温泉地を管理する行政や旅館組合などとも交渉して理解を求めていく必要があり、これには当初の予想よりも時間がかかっているが、来年度中には規模を拡大した試験を実施できる見込みであり、おおむね計画通りに研究が進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り、温泉水を用いて大規模な試験を実施するためには産官学の連携が不可欠であり、一個人の研究者が自力で本試験を遂行することは困難である。そのため、これまでにも様々な温泉地との信頼関係を築いている一般財団法人日本健康開発財団および温泉医科学研究所に協力を依頼し、平成25年度末には共同研究体制を整えてこれを克服した。平成26年度には計3ヶ所の温泉水を用いた試験を実施予定であり、ボランティアを集めることさえできれば当初の計画通りの時期に効能の評価を行うことが可能であると考えられる。
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