研究課題
SiC、TiO_2などのワイドギャップ半導体は、省エネルギーパワーデバイス、光触媒、新型太陽電池の電極材などへの応用が考えられており、エネルギー問題・環境問題を解決する上で重要な材料である。これらの材料の物性は、固体中の格子振動と電子の相互作用(電子格子相互作用)が重要な役割を担っていると考えられており、その相互作用の解明のために、格子振動の励起を制御する技術が必要となる。そのための技術として、格子振動の吸収エネルギーに対応する光(中赤外レーザー)を固体に照射して、特定の格子振動を選択的に励起するという方法が考えられている。しかしながら、中赤外レーザーの照射で、格子振動の励起状態の制御ができることは直接的に証明されていないため、その原理実証が必要である。そこで、中赤外レーザーによる選択的な格子振動励起の実証を目的として、本研究を行った。励起用の中赤外レーザーとしては、様々な格子振動の吸収エネルギーに対応可能(波長可変性)であり、かつ短パルス・高出力な中赤外自由電子レーザー(KU-FEL)を用いた。また、中赤外レーザーによる運択的格子振動励起の原理実証に、アンチストークスラマン散乱(AS)分光法を用いた。AS光は、極低温て熱による格子振動を抑制した状態では、外部刺激によって格子振動を励起された場合にのみ発生するた屍、AS光が観測されることは、そのエネルギーに対応する格子振動が励起させられたことを示す。この原理を用いて、14Kのワイドギャップ半導体のサンプル(単結晶sic)にAs分光用のプローブ光とKU-FELを同時照射し、KU-FELの発振波長に対応するエネルギーのピーク(FELの発振波長10.4μm=970cm^-1)がAS光のスペクトルとして観測された。このことから、中赤外レーザーにより選択的に格子振動を励起できることが証明された。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題は、大きく分けて二つの研究を行う。具体的には、1)中赤外レーザーによるワイドギャップ半導体(SiC)の格子振動の選択的励起(選択的格子振動励起)の原理実証と、2)選択的格子振動励起時の電子状態の観測を行いSiCの電子格子相互作用を解明することを目的としている。研究計画の通り、初年度に1)の課題を達成し、最終年度に2)の課題に取り組む予定で、研究計画通りに進んでいると言える。
中赤外レーザーによる選択的格子振動励起時の電子状態の変化を観測するために、中赤外レーザーとフォトルミネッセンス(PL)分光用プローブ光(Nd-YVO_4レーザー)をサンプル(SiC単結晶)に同時照射可能な測定系(FEL-PL測定システム)の構築を行う。その後、SiCの格子振動の吸収波長(10.4μm)に調節した中赤外レーザー照射時(選択的格子振動励起時)のPL測定、SiCによる吸収が起こらない波長の中赤外レーザー照射時のPL測定、および熱的励起時(非選択的格子振動励起時)のNd-YV0_4レーザーによるPL測定を行い、特定の格子振動励起が及ぼす電子状態の変化を検証する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Applied Physics Letters
巻: 103 ページ: 182103-182106
10.1063/1.4827253