研究課題
研究員は本年度、有理数体のZ_p拡大における高次K群K_mの研究を行った。この問題に関して、m=2の場合は、研究員自身がWilesによるゼータ関数の特殊値を用いたK_2の位数公式を利用することにより、K_2の位数の挙動に関する結果を得ていた。一般のmの場合、Bloch-Kato予想に関するVoevodsky-Rost等の結果と岩澤主予想に関するWilesの結果から、K群と代数体のゼータ関数との間の関係を記述できることが知られている。研究員は、K群とゼータ関数の間のこの関係を利用し、さらにm=2の場合の手法を改良することにより、mが4を法として2と合同な場合にK群K_mの位数が非有界であり、さらにこれらのK群の位数を割るような素数が無数に存在することを証明した。この結果は学術雑誌に投稿し、受理されている。また、次数mが4を法として1または3と合同な場合のK群について、そのねじれ部分群の位数の挙動に関する結果も得られた。研究員は、有限体上一変数関数体の特別な拡大に付随する非特異射影曲線の高次K群の研究も行った。一変数関数体は代数体とよく似ていると考えられており、その類似性の研究は重要といえる。特別な拡大として具体的には、有理数体のZ_p拡大の類似として、関数体上の(1)係数Z_p拡大の場合と(2)幾何的円分Z_p拡大の場合を考察した。いずれの場合もK群の位数と曲線のゼータ関数の特殊値との関係およびWeil予想によりK群の位数を調べた。(1)については、Ji-Qinが独立に研究を行っていたが、関数体の種数が0のとき一般のmに対しK_mの位数は有界であり、関数体の種数が1以上のとき1以上のmに対しK_mの位数は非有界で、さらにこれらのK群の位数を割るような素数が無数に存在することを証明した。(2)においては、Gold-Kisilevskyによる種数の評価式を用いて、一般のmに対してK_mの位数が非有界であることを証明した。
2: おおむね順調に進展している
上記のとおり、代数体に対する高次K群の研究で、mが4を法として1、2、3と合同な場合に進展が得られた。mが4を法として0と合同な場合には困難が残っている。また、有限体上一変数関数体に対するK群の研究においても進展が得られており、おおむね順調に進展しているといえる。
前年度の研究を継続し、Coates問題及びその周辺の研究を推進する。円分体論では円単数が重要な役割を果たしているが、K群にある円分的元との関係についても深く考えていく予定である。さらに、楕円曲線や保型形式の岩澤理論への応用研究や、Greenberg予想、BSD予想やp進BSD予想等の未解決予想との関連の研究も進めていく予定である。
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International Journal of Number Theory
巻: Vol.9, No.7 ページ: 1713-1724
10.1142/S1793042113500528