熱伝達素過程のひとつである凝縮は相変化によって多くの熱を輸送することができる。特に滴状凝縮は膜状凝縮と比較して高い熱輸送能力を示すことが報告されている。そのため、滴状凝縮を利用するための凝縮面などが研究されているが、さらに効率を高めるためにはマイクロスケールの液滴の生成・離脱が重要な課題となっている。しかしながらこれまでの諸論では濡れ性が一様な面を扱っており、濡れ性を制御した面上でのこのようなスケールの凝縮メカニズムは明らかになっていない。そこで本研究では剥離したグラファイト上での凝縮を観察し議論することでこの問題を明らかにする。実験で使用するグラファイト表面はナノスケールのステップを無数に有しており、ステップ部分は比較的親水性になっている。この表面構造は凝縮する位置を明らかにするため原子間力顕微鏡(AFM)によって予め観察される。凝縮実験は環境制御型走査電子顕微鏡(ESEM)内で行い、表面温度0℃、圧力560Paにおいて直径150nm以上の液滴が150nm以上の間隔でステップに沿ってできていることが観察された。この時液滴間隔はステップが高く、ステップ間隔が狭いほど短くなる傾向が得られた。この結果を説明するため親水部分に水分子が数層吸着されると仮定して古典核生成理論を拡張したモデルを提案する。このモデルと実験結果を比較すると、核生成時の接触角が100であると仮定するとほぼ一致することが明らかになった。ここで得られた結果は、凝縮した液滴を効率良く離脱させることのできる表面の設計に役立つと考えられる。
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