研究課題/領域番号 |
13J05008
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉井 達之 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 超分子 / ヒドロゲル / バイオマーカー / 刺激応答性 / シグナル増幅 / 高感度 |
研究概要 |
低分子化合物の自己集合により形成する超分子ヒドロゲルは、様々な外部刺激に応答してゲルーゾル転移を引き起こす。そのため、疾病の進行度を示すバイオマーカーに応答する超分子ヒドロゲルを創出できれば、特定環境下において薬剤を放出するDDS材料や簡便かつ目視により診断可能な医療ツールとしての応用が期待できる。我々はN末端にボロン酸フェニルメトキシカルボニル(BPmoc)基を修飾したペプチド分子(BPmoc-F_3)が、過酸化水素(H202)応答性の超分子ヒドロゲルとして機能することを見出している。今回、検出バイオマーカーの拡張を目的として、基質を酸化する際にH202を発生する種々のオキシタダーゼを内包した超分子ゲルを作製した。その結果、グルコース、コリン、サルコシン、尿酸といった複数のバイオマーカーに応答する超分子ヒドロゲルを作製することに成功した。 BPmoc-F3に酸化酵素(オキシダーゼ)を内包すると、基質となるバイオマーカーに応答しゲルーゾル転移転移を起こすことが明らかとなったが、ゲル化剤とH202の反応は1:1の両論比で起こるため、生体内に微量に存在するバイオマーカーに対してはゲルーゾル転移を示さないという問題点があった。そこで、ゲル内にシグナル増幅機構を内包することにより、ゲルの高感度化を目指した。BPmoc-F3ゲルに増幅分子と尿酸オキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼを内包し、尿酸を含む水溶液を添加したところ、ゲル化剤に対して5分の1の尿酸に応答し」巨視的なゲルーゾル転移を示した。これらのことから、期待通り導入したシグナル増幅機構が働きゲルの応答性を高めることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
シグナル増幅剤の開発に向けて、最適化・試行錯誤が必要かと思われていたが、設計・合成した化合物がうまく働き、H202シグナルだけでなく、バイオマーカー応答まで示すことが明らかとなったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、より実用に向けた展開を行う。具体的にはヒト血清サンプルなどを用い低濃度のバイオマーカー検出を検討する。夾雑系になるので、予期せぬ副反応やゲルの不安定性が懸念される。その際には再度分子設計等に還元し、最適化を図る。
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