本年度はまず前年度までの研究を発展させ、ネットワークの上の流れと、ネットワークの構造がどのように関係しているかについて調べた。道路のネットワークを生成するモデルとして知られているBarthelemy-Flamminiモデルを利用して様々な構造を持つ道路網を生成した。この上で交通流をランダムに発生させて全体の流れの振る舞いを分析した結果、ネットワークの一部に交通が集中するような構造になっていることが全体の流れの効率を悪化させることがわかってきた。本研究については継続的に研究を進める。 また、人同士の相互作用が各人の振る舞いにどのような影響を与えるのかを調べた。第一に、人間の“場所”に対する評価がどのように行われているのかを明らかにするため、実験の結果を分析した。被験者の場所の選択のパターンを、Vorinoi図で専有面積を評価しする手法により可視化した。その結果、場所の利得に加え、他人の動きを予知してそれを避けるような振る舞いが影響を与えていることが分かった。本研究の結果をまとめた論文は、現在審査中である。第二に、ゲーム理論的に人間同士の振る舞いを理解する研究を行った。人同士が互いに利害関係のある状況で協力的に振る舞うかどうかを記述する理論にはいくつか有力なものが知られているが、本研究では強化学習のモデルであるBush-Mostellerモデルを利用した。その結果、これまで広く信じられている進化ゲーム理論より強化学習のほうがよりよく実験で観察される人間の振る舞いを再現することが分かった。本研究をまとめた論文は、現在審査中である。
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