研究概要 |
本研究では、高い造影能と"がん"への集積性を併せ持つ概念的に新しい"分子プローブ型デンドリマーGd-MRI造影剤"の創製を目的として研究を行っている。 平成25年度は、まず、コアである1,4,7-トリアザシクロノナン(TACN)の1つの窒素原子にマレイミド基を、また、残り2つの窒素原子に第二世代のキラルデンドロンを結合させた配位子を合成し、このマレイミド基に末端チオール基を有する乳がん特異的認識能をもつ抗HER2部分抗体(anti HER2-scFv)の導入を行い、最後にGdC13と錯化させることにより、"分子プローブ型新規キラルデンドリマートリアミン配位Gd-MRI造影剤の合成と機能評価"を行った。本造影剤について、7Tの小動物実験用MRI装置によるin vitroでの造影能の評価を行った結果、臨床用MRI造影剤であるMagnevist^Ⓡの約3倍の大きいr_<1>を示すことが明らかとなった。 同様に、マレイミド基に末端チオール基を有する分子量2,000、10,000、および30,000のポリエチレングリコール(PEG)鎖を導入し、ステルス効果とEPR (Enhanced Pemleability and Retention)効果による「がん」への集積性が期待される新規Gd-MRI造影剤の合成に成功した。導入したPEG鎖の分子量が大きくなるに従って、r_<1>値が増大し、分子量30,000のPEG鎖を導入した造影剤は、Magnevist^Ⓡの約6倍の大きいr_<1>値を示した。 末端ポリオール型キラルデンドリマートリアミン配位Gd-MRJ造影剤については、第一~第三世代のデンドリマー造影剤を合成し、デンドリマー世代が大きくなるに従って、rl値が大きくなることを明らかにした。さらに、末端ポリアミノアルコール型デンドリマートリアミン配位Gd-MRI造影剤については、ラセミ体に加えて、新たに全ての不斉点がRおよびSのキラルな造影剤をエナンチオ選択的に合成し、その機能評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
末端ポリアミノアルコール型キラルデンドリマートリアミン配位Gd-MRI造影剤については、アミノ基にポリエチレングリコール(PEG)鎖を導入した造影剤のEPR効果による受動的ターゲティング機能を、一方、乳癌特異的抗HER2抗体を導入した造影剤の能動的ターゲティング機能をマウスを用いるin vivo実験により明らかにする。 さらに、末端ポリアミノアルコール型造影剤の合成前駆体である末端ポリアジドアルコール型デンドリマートリアミン配位Gd-MRI造影剤を合成し、末端にアルキン部位を有するPEGとのHuisgen Cycloaddition (Click Chemistry)反応を行い、1,2,3-トリアゾール環をリンカーとしてPEG鎖を導入した新規キラルデンドリマートリアミン配位Gd-MRI造影剤の合成と機能評価を行う。最終的には、一連のキラルデンドリマートリアミン配位Gd-MRI造影剤の内、最も高い感度と機能(癌集積性)を有し、最も毒性の低い造影剤について大量合成法を確立し、非(前)臨床試験への移行を判断する。
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