研究実績の概要 |
本研究では、高い造影能と“がん”への集積性を併せ持つ概念的に新しい“分子プローブ型デンドリマー Gd-MRI 造影剤” の創製を目的として研究を行っている。 平成 26 年度は、末端ポリアミノアルコール型キラルデンドリマートリアミン配位 Gd-MRI 造影剤のさらなる高機能化を目的として、アミノ基をトリガーとするポリエチレングリコール鎖(PEG、平均分子量 5,000)、および代表的なタンパク質であるウシ血清アルブミン(BSA、約 66.000 Da)の導入に成功した。 7 T の小動物実験用 MRI 装置を用い、合成した一連の新規造影剤の in vitro での 1H 緩和能を評価した。その結果、ポリアミノアルコール型キラルデンドリマートリアミン配位 Gd-MRI 造影剤にPEG鎖を導入した新規造影剤(1)、BSAを導入した造影剤(2) は、臨床用 Gd-MRI 造影剤である Magnevist;(r1 = 4.1 mM-1・sec-1)の約13 倍、25 倍となる高い 1H 緩和能(r1 =52.6 (1)、103 (2) mM-1・sec-1)を有することが明らかとなった。 一方、末端にアジド基を有するポリアジドアルコール型キラルデンドリマートリアミン配位子の合成を行った。合成した配位子のアジド基を利用し、末端プロパルギル基を有する PEG 鎖を導入するため、銅触媒を用いる Huisgen cycloaddition(Click Chemistry)について検討した。銅触媒、配位子、還元剤、および溶媒等について検討を行ったが、現在のところ Huisgen Cycloaddition には成功していない(no reaction)。この原因としては、ポリアジドアルコール型キラルデンドリマー配位子のコアである 1,4,7-triazacyclononane が銅触媒に強く配位することにより、触媒失活が起こったことが考えられる。
|