研究課題/領域番号 |
13J05118
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
樋山 麻美 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 気孔 / 孔辺細胞 / リン酸化プロテオーム / フォトトロピン / シグナル伝達 / シロイヌナズナ / アニオンチャネル |
研究実績の概要 |
青色光依存の気孔開口は受容体キナーゼであるフォトトロピンを始点としたリン酸化シグナル伝達によって引き起こされる。本研究では青色光依存的な気孔開口に関わる新規因子を探索するため、孔辺細胞を材料としたリン酸化プロテオーム解析を行った。昨年度までに青色光に依存して再現良くリン酸化されるキナーゼと、最近縁のキナーゼの二重変異体において、青色光に依存した気孔開口が、細胞膜プロトンポンプの活性化とは別の経路によって損なわれていることが示唆された。 そこで今年度は二重変異体で気孔が開かなくなるメカニズムを明らかにするため実験を行った。生葉における気孔開度測定において、数値のみを見ると気孔は開かないように見受けられたが、注意深く観察を行うと、二重変異体の気孔は一度開いてから素早く閉じるという表現型を示していることがわかった。また、この気孔が素早く閉じる現象は、孔辺細胞の周りの塩(KCl等)濃度が低くなった時のみ観察された。これらの結果から二重変異体の孔辺細胞では光の下で細胞外にイオンを排出する輸送体が恒常的に活性化しているため、気孔が閉じてしまうのではないかと考えた。そこで細胞膜アニオンチャネルに着目し、アニオンチャネル阻害剤(anthracene-9-carboxylic acid)を塩濃度が低い溶液に加えることで気孔が閉じなくなるか観察した。結果、アニオンチャネル阻害剤を加えると気孔は閉じなくなることがわかり、この二重変異体ではアニオンチャネルを阻害する系が損なわれているために気孔が開かなくなっていることが予測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では今年度、このキナーゼがリン酸化される機能的意義まで明らかにしたかったが、リン酸化アミノ酸残基を置換した形質転換体の作成が遅れており、年度内に実験することが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は共同研究によって実際にアニオンチャネルの活性を測定したいと考えている。また、シロイヌナズナでは気孔閉鎖に関与するアニオンチャネルが複数報告されている。現在、二重変異体とアニオンチャネル遺伝子欠損変異体との三重、四重変異体を作成中であり、来年度は遺伝学的にもアニオンチャネルとの関係を証明したい。また、リン酸化アミノ酸残基を置換した形質転換体の表現型解析も進めていく予定である。
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