研究課題/領域番号 |
13J05121
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
太田 岳 東北大学, 大学院歯学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 振動 / ひずみ / 骨芽細胞 |
研究概要 |
近年、歯周組織に機械的な振動刺激を加えることによって歯の矯正治療にかかる時間が短縮させられることが示唆されており、その現象解明が求められている。しかしながら、振動刺激が歯周組織を賦活化する研究報告例は決して多くはないのが現状であり、現象解明には振動周波数、振動加速度といった具体的なパラメータを制御した環境を用意し、実際に細胞が受ける微小な振動(ひずみ)を定量しながら調査をする必要がある。 そこで本年度は、上記の課題を解決するためにin vitroにおいて振動刺激負荷装置の設計・開発を行い、マウス骨芽細胞様細胞MC3T3-E1細胞に振動刺激を加え、その遺伝子発現を解析した。 細胞の培養には、生体に近い材料であるシリコーンゴムをtype 1 collagen (Col-1)でコーティングした系を用いた。Col-1コーティングしたシリコーンゴム上にストレインゲージを接着し、細胞が培養表面で受ける微小なひずみをμストレインレベルで正確に測定することに成功した。その結果、ひずみは振動加速度依存的に線形に変化することが明らかとなった。 次に、MC3T3-E1細胞をCol-1コーティングしたシリコーンゴム上に培養し、本研究で確立した振動刺激負荷装置によって刺激を加えた結果、振動周波数、振動加速度がそれぞれ60Hz、および5.0m/S^2の条件下においてRunx2、Osterix、Col-1、Alkaline Phosphataseの遺伝子発現が上昇することが示唆された。この振動刺激はcell viabilityに影響を与えなかった。以上の研究により、in vitroにおいて、振動刺激による骨芽細胞の分化および骨形成マーカー遺伝子発現上昇が誘導されるという新たな知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請者は当初の予定に従い、in vitro系における実験装置の設計・開発に重点を置いて研究を進め、装置の開発とひずみ測定を達成した。その後、本年度の予定以上に研究を進め、骨芽細胞様細胞MC3T3-E1を培養し、刺激を負荷した。さらにリアルタイムPCR法による遺伝子発現の解析やviability assayを行うことができている。その結果、これまで報告されていない結果を得るに至り、現在論文投稿中の段階にまで到達している。一方、in vivo用の装置の設計・開発についてはおおむね計画通りに進んでいる。以上のような観点から申請者は現在の研究目的の達成度についておおむね順調に進展していると評価される。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究によって振動刺激は骨芽細胞の分化および骨形成マーカー遺伝子の発現上昇を誘導することが示唆された。この結果から、振動刺激が何らかの生化学的なシグナル伝達を通して骨芽細胞に作用していることは明らかであり、今後は代表的なシグナル伝達分子の同定することが重要である。代表的なシグナル伝達物質の同定に成功すれば、当初の研究目的である振動刺激の最適な入力パラメータの決定も可能であると考えられる。したがって次年度はこの観点に絞った研究を行う予定である。
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