研究実績の概要 |
力学的振動刺激が治療に有効であることが整形外科、歯科領域で報告されている。これまで、振動刺激がマウス骨芽細胞用細胞MC3T3-E1細胞の骨芽細胞特異的転写因子Runx2、Osterixおよび骨形成分化マーカー遺伝子Type I Collagen、Alkaline PhosphataseのmRNA発現を上昇することを示した。しかしながら、上記の現象を引き起こすシグナル伝達分子や、振動が細胞骨格の変化、および分化後期の遺伝子発現に関しては不明な点が多い。 そこで当該年度においては、振動によってタイプIコラーゲンコーティングしたシリコーン膜上に生じるひずみ計測を定量に行いつつ、振動刺激によるMC3T3-E1細胞の骨形成マーカー遺伝子発現、細胞骨格の免疫染色による変化の解析、骨芽細胞分化に関わるシグナル伝達分子のリン酸化の有無を解析した。 結果として、1日あたり30分の振動刺激(周波数60Hz,振動加速度5 m/s2)を2日間行った細胞におけるOsteocalcinの遺伝子発現は、刺激を加えない細胞に比べて有意に上昇した。また、同条件の振動刺激を3日受けた細胞において、明らかなアクチンストレスファイバーの増大が見られた。さらに振動刺激負荷後にMitogen-activated protein kinases の一つであるextracellular signal-regulated kinase 1/2(ERK1/2)の一過性のリン酸化の亢進が認められた。また、ERK1/2のリン酸化はU0126によるMEK1/2の阻害により抑制された。 これらの結果より、振動刺激による骨形成分化がERK1/2シグナル伝達経路の活性化およびアクチンストレスファイバーの増大を伴い促進されることが示唆された。
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