研究課題/領域番号 |
13J05127
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 若奈 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | メリステム / 花 / 有限性 / 腋芽 |
研究実績の概要 |
昨年度,tillers absent1 (tab1) 変異体では花だけでなく,栄養成長期の側枝形成が阻害されることを示していたので,本年度は主に腋芽形成に着目して解析を行った.tab1 では,腋芽形成のごく初期から腋芽メリステムの発生が損なわれており,これが原因で腋芽が形成されないということが判明した.腋芽メリステムが形成される過程では,未分化細胞の維持に必要な OSH1 遺伝子が発現を始め,完成した腋芽メリステムまでその発現が持続する.tab1 では,この OSH1 の発現がごく初期から非常に弱くなっているため,腋芽形成時に未分化細胞を維持できなくなると考えられる.一方野生型では,TAB1遺伝子は腋芽形成のごく初期から中期頃まで発現し,この TAB1 の発現によって,腋芽形成時の未分化状態が維持されていると考えられる.腋芽メリステムが完成する頃になると TAB1 の発現は消失することから,TAB1にかわって別の遺伝子が腋芽メリステムの維持に関わっている可能性が考えられた.そこで,TAB1 に近縁で,茎頂メリステムの維持に重要なイネの WOX4 遺伝子に着目した.WOX4 は,腋芽形成のごく初期においては発現せず,完成した腋芽メリステムにおいてのみ強く発現した.この結果から,2つの近縁な WOX 遺伝子の連続的な働きにより,イネの腋芽形成が制御されていることが示唆された. twin eyes (twe) 変異体では,雌ずいは形成されるものの,胚珠が増加する場合や胚珠の形成される位置が異常になる場合がある.そこで,メリステムの有限性制御に関わる OsMADS3 の変異体との二重変異体を作製したところ,劇的な花器官数の増加が観察された.この結果から,TWE 遺伝子がメリステムの有限性制御に関わっている可能性が支持された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した計画内容におおむね従い,tab1 変異体の表現型解析および TAB1遺伝子の機能解析を遂行した.この研究成果を THE PLANT CELL 誌に発表した.
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今後の研究の推進方策 |
twe 変異体の原因遺伝子を同定するためのマッピング用のサンプルを採取しようとしたが,インディカのカサラスとの F2 集団から twe の表現型を示す個体を得ることができなかった.栽培環境をかえて温室で F2 集団を栽培したところ,非常に低頻度ではあるが,F2 集団から twe 変異体の表現型を示す個体を単離できた.そこで来年度は,温室での栽培およびスクリーニングを行い,TWE の単離を目指す. 腋芽形成については,TAB1 遺伝子が発現するごく初期のステージがどのような領域なのかを明らかにする.また,腋芽形成が異常となる新規の変異体を単離し,腋芽形成に関する理解を深めたい.
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