研究課題/領域番号 |
13J05163
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
新村 芳美 千葉大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 送粉生態学 / 花色 / スズメガ媒 / オシロイバナ / 進化の袋小路 / 系統解析 |
研究概要 |
自身のこれまでの研究で、オシロイバナ(Mirbilis jalapa L.)は花色ごとに異なる送粉者を利用していることが示唆された。動物媒の植物で、近縁種間で送粉者のシフトが起きることは多くの事例で知られているが、オシロイバナのように、種内の花色の違いが送粉者の多様化に対応する事例はほとんど知られていない。また、スズメガ媒花は「進化の袋小路」にあると言われるほど、送粉者に適応して花形態が特殊化している。もしも、オシロイバナが白花のスズメガ媒花から進化したのだとしたら、オシロイバナが種内に花色と送粉者の多様性を持つことは、「進化の袋小路」から脱出した特異な例であると言える。そこで、私は、オシロイバナがどのようにして花色と送粉者の多様性を持つに至ったかを明らかにするために、系統解析と祖先形質状態の推定を行なった。 オシロイバナが属するオシロイバナ節植物全10種を含めた系統解析を行なったところ、オシロイバナ節は単系統群となること、また、M. exsertaという白花のスズメガ媒花がオシロイバナ節の基部で分岐することが明らかになった。なお、M. exsertaがスズメガ媒花であるということは、メキシコのバハ・カリフォルニア半島で実施した送粉調査によって、初めて明らかになった。しかしながら、遺伝的変異の乏しさから、オシロイバナ節内の系統関係を完全に解くことが出来なかったため、オシロイバナに最も近縁な種を推定することが出来なかった。 また、解像度は低いものの、この系統樹を使って祖先形質状態の推定を行なったところ、オシロイバナ節植物の祖先は赤花であるという可能性が示唆された。しかし、オシロイバナの近縁種が明らかになっていないため、オシロイバナが白花のスズメガ媒花から進化したという仮説については、今後の解析で更に詳しく検証する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
メキシコでの海外調査に思った以上に予算を割いてしまい、次世代シーケンサーを使ったトランスポゾンの探索を行なうことが出来なかった。ただし、系統解析に必要なサンプルの入手、オシロイバナの近縁種の送粉様式の決定などについてはおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
オシロイバナ節の系統解析に関しては1年目で完了する予定だったが、予想以上に種間の遺伝的変異が乏しく、葉緑体4領域のみでは節内の系統関係を完全に解くことが出来なかった。 そのため、今年度は葉緑体だけではなく核領域からも複数、解析に使用し、詳細な系統樹を作成する。また、2年目のメキシコ調査では、Mirabilis urbanii、M. hintoniorum、M. donahooianaなどといった種を対象に野外調査を行なう予定だったが、これら3種の分布するMichoacan州の治安が非常に悪化しており、調査を実施することは非常に困難となることが予想されている。このため、今年度は、その他オシロイバナ節植物の野外調査を中心に進め、上記の3種の調査にっいては、治安の回復を待ちたいと考えている。
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