研究課題/領域番号 |
13J05163
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
新村 芳美 千葉大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 送粉生態学 / 花形態の進化 / 送粉者シフト / オシロイバナ / スズメガ媒植物 |
研究実績の概要 |
自身のこれまでの研究で、オシロイバナは花色ごとに異なる送粉者を利用していることが示唆された。動物媒の植物で、近縁種間で送粉者のシフトが起きることは多くの事例で知られているが、オシロイバナのように、種内の花色の違いが送粉者の多様化に対応する事例はほとんど知られていない。また、スズメガ媒花は「進化の袋小路」にあると言われるほど、送粉者に適応して花形態が特殊化している。もしも、オシロイバナが白花のスズメガ媒花から進化したのだとしたら、オシロイバナが種内に花色と送粉者の多様性を持つことは、「進化の袋小路」から脱出した特異な例であると言える。そこで、私は、オシロイバナがどのようにして花色と送粉者の多様性を持つに至ったかを明らかにするために、系統解析と祖先形質状態の推定を行なった。 オシロイバナ節植物全10種を含めた系統解析を行なったところ、オシロイバナ節は単系統群となること、また、M. exsertaという白花のスズメガ媒花がオシロイバナ節の基部で分岐することが明らかになった。しかし、遺伝的変異の乏しさから、オシロイバナ節内の系統関係を完全に解くことが出来なかったため、オシロイバナに最も近縁な種を推定することが出来なかった。解像度は低いものの、祖先形質状態の推定を行なったところ、オシロイバナ節植物の祖先は赤花であるという可能性が示唆された。しかし、オシロイバナが白花のスズメガ媒花から進化したという仮説については、今後更に詳しく検証する必要がある。 2014年のメキシコ調査では、M. sanguineaとM. prinleiの2種について送粉調査を行った。赤花で短い花筒を持つ朝咲きのM. sanguineaはハチ媒花であること、そして、星形の赤い花冠、白色の長い花筒を持つ夕咲きのM. pringleiはスズメガとハチドリに送粉されることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
オシロイバナ節植物の遺伝的多様性が予想より低く、解像度の高い系統樹の構築に苦戦しているため、当初の予定よりやや遅れている。 また、メキシコのMichoacan州の治安が芳しくないため、現地での送粉調査が実施出来ずにいる。
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今後の研究の推進方策 |
解像度の高い系統樹を構築するため、long PCR methodと次世代シーケンサーのMiseqを用いて葉緑体ゲノムによる系統解析を行う。 また、Mirabilis節植物の中で送粉様式の明らかになっていない種である、M. donahooiana、M. hintoniorum、M. urbaniiの3種について、メキシコで送粉調査を行う。Michoacan州の治安は未だ回復していないが、現地研究者に協力を仰ぎ、調査を遂行したいと考えている。
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