研究課題
今年度は、2011年東北津波において見られた海岸堤防の被災実態を整理するとともに、水理実験と数値計算を用いて津波越流時に海岸堤防周辺で生じる流体運動と被災機構の関係について分析した。2011年東北津波における海岸堤防の被災実態については、津波痕跡高と津波来襲時に撮影された映像に基づき、津波来襲時に海岸堤防周辺で生じた流体運動に関して分析した。これにより、海岸堤防を越流する津波の状態はひととおりではなく、周囲の地形等の影響を受けてその状態が変化することがわかった。水理実験では、循環流を津波造波方法として採用することで越流する津波を再現し、海岸堤防を越流する津波の定性的な分類とそれぞれの流体運動の基礎的な特徴の把握を試みた。本研究では、本間(1940)が堰堤の流量係数を求める際に用いた三つの分類(完全越流、不完全越流、潜越流)を参考に論じた。流速場の可視化と堤防に作用する圧力を計測することで、完全越流、不完全越流、潜越流のそれぞれの状態における流体運動の特性と生じ得る堤防への被害の関係について明らかにすることができた。数値計算では、Large Eddy Simulation (LES)モデルを用いて、上記の水理実験と同様のスケールで数値計算を実施し、津波越流時に海岸堤防周辺で生じる流体運動の内部特性とその時間変化について検討した。沖側境界から一定流量を流入させることで、沿岸に設置された海岸堤防を越流する流れを再現し、流速場と圧力場の特徴や海岸堤防背後の地形による流れの変化について考察した。数値計算による検討を通して、津波の流体運動による海岸堤防の被災機構にっいて検討する際には、周囲の条件を考慮に入れて流れの状態の時間変化を再現できるようにする必要があることを示した。
(抄録なし)
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