研究実績の概要 |
私が Jimmy Petean 教授 (CIMAT、メキシコ) の下に昨年度の2ヶ月間滞在した時から始まった共同研究を、今年度は更に進めた。得られた結果に関する論文を投稿しアクセプトされたこと、および2016年の1月から3月にかけて再びメキシコを訪れて同氏との共同研究をさらに発展させたことなどが今年度の主な成果である。 アクセプトされた論文``Metrics of constant scalar curvature on sphere bundles’’について述べる。論文を投稿した後、2人のレフェリーから数学的および形式的な不備について具体的な指摘を受けた。我々は得られた結果について一から考え直し、結果を大幅に改善して論文を完全に書き直した上で、雑誌に再提出した。共著者のPetean氏とは主にメールでのやり取りを行っていたが、日本とメキシコで直接意見の交換を行うこともあった。再提出後には修正要求をされることなしにアクセプトされた。 メキシコ滞在中にPetean教授との共同研究で得られた結果と今後の研究の展開について述べる。山辺の問題に対する局所分岐については de Lima-Piccione-Zedda (2012, 2012)、Bettiol-Piccione (2013, 2013)が既に考えていた。我々は彼らの結果の (全てではないが) ほとんどを再現し、一部を拡張できるような一般的な結果を得た。さらに、閉 Riemann 多様体に等径関数が備わっているために解析が常微分方程式に落ちる状況においては、我々は大域分岐に関する結果も得た。この結果は Henry-Petean (2014) による定曲率球面に対する結果を一般化する。次に我々が考えたいのは、解析が常微分方程式に落ちない状況での大域分岐である。Euclid空間上の2階楕円型PDEの大域分岐について Healey-Kielhofer (1991, 1993) の興味深い研究があり、彼らの考え方を応用すると一般の平坦なRiemann多様体に対して山辺の問題における大域分岐を考えられると期待できる。
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