研究概要 |
肝細胞の機能向上と一酸化窒素(NO)との関連を調べるために, 細胞に一酸化窒素(NO)を直接負荷出来るデバイスを作製した. 従来NOを細胞に直接負荷する方法は少なく, 長期間ガスを負荷するデバイスは存在しなかった. したがってNOを負荷できるデバイスの開発は重要である. ガス負荷による細胞播種面の振動はガス流路と播種面を一体化させることで細胞の剥離を防いだ. また酸素ガスをNOとは別の流路から流すことで, 細胞に酸素とNOを同時に負荷しかつNOが酸化する前に細胞に負荷することが可能である. 更にこのデバイスは細胞に流れをかけることも可能であり, NOガスと流れの影響を同時に検討することが出来る. 作製したNO負荷デバイスを用いて肝細胞に異なる濃度のNOガス(0.5ppm, 5ppm)と流れを負荷し, 肝細胞機能(アンモニア分解量)を測定した. ガスを負荷しないモデルと比較し, 0.5ppmでは2倍, 5ppmでは1.4倍の機能向上が見られた. これは肝機能の向上にNOガス濃度が密接に関与していることを示しており, 機能向上に最適なNO濃度が存在することを世界に先駆けて発見した. 最適なNO濃度を明らかにすることは, 人工肝臓や低下した生体内の肝臓の機能を高める研究に対して非常に重要だと考えられる. 次に, 肝細胞と星細胞の共培養モデルに5ppmのNOガスを負荷した, 負荷していないモデルと比較するとアンモニア分解量に違いは見られなかった. この結果から, 5ppmのNOガスは肝細胞と星細胞の共培養モデルに影響を与えない可能性が示された. したがって培養している細胞の種類などが変化した時, 条件によって最適なNO濃度が存在し, 個別に調べていくことが重要であると考えられる.
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