研究概要 |
本研究では, 水文環境を反映した侵食, 運搬, 堆積の地表プロセスを理解するために, 小規模な湖沼-流域系で堆積物試料および水文資料を収集・解析し, 地形条件に基づく降水量の一般式を導入する。大規模な湖沼-流域系では流域の水文資料と柱状堆積物の物理量を比較し, 降水量の一般式を確立・検討する。長尺堆積物コア試料の物理量から歴史時代の降水量変動を復元することを目的とする。 1. 地表プロセスの理解-降水量一般式の導入- 滝谷池(金沢市)および泥鰌池(立山)で定期的な堆積物試料の採取および水位の観測, 解析を継続した。滝谷池堆積物の物理量と流域周辺の水文資料への統計解析から, 堆積速度を降水強度(外的要因)と水位(侵食可能な面積の増加)(システム要因)の関数で表すことができ, 降水量一般式を導入した。 2. 地表プロセスの検証-降水量一般式の検証と推定式の確立- 滝谷池で求めた降水量一般式は, 琵琶湖の台風・洪水時(伊勢湾台風, 明治大豪雨)の堆積環境と矛盾がなかった。大沼(北海道)で, 堆積物の物理量と水文資料(流量, 降水量)の収集および解析を行った。降雪地域において夏季(降水)と冬季(降雪と雪解け)では地表プロセスが異なると推定した。堆積物の鉱物粒径と降水量(特に夏季降水量)のよい相関関係が明らかになった。 3. 歴史時代の環境変動の復元 大沼の4mコア堆積物について物理量解析と3本のコアの層序を検討し, 余呉湖(滋賀県)では放射性核種を用いることで堆積年代の解釈が進んだ。 4. 成果報告 : 成果を国際学会(口頭発表2件, ポスター発表1件)と国内の報告会(1件)で報告した。 5. 海外での研究活動 : モンゴルでの野外調査と, 韓国での地形解析学習および野外巡検に参加し, 観測技術や解析技術の向上を図るとともに研究交流を行った。 6. 研究の発展 : 降水量一般式の検証に用いる湖沼-流域系をモンゴル, 韓国, 福島で検討した。
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