研究課題/領域番号 |
13J05241
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
逸見 祐次 岡山大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 細胞内輸送 / 初期エンドソーム / 脂質膜 / 細胞内pH / EHD |
研究概要 |
初期エンドソームは細胞外から取り込まれた物質を選別する細胞内小器官である。初期エンドソームからリサイクリング経路への輸送機構は、一般的な輸送小胞とは異なり、チューブ状の膜構造を形成することが知られている。このチューブを介した輸送は細胞のがん化などに深く関与しており、その解明が望まれている。しかし、この輸送機構は未だ多くの部分が謎である。我々の最近の研究で、初期エンドソームからの輸送を制御し、脂質のチューブ形成を担う遺伝子としてEHDを同定した(未発表データ)。EHDが結合する脂質を調べた結果、ボスファチジン酸と強く結合することを見出した。近年、ボスファチジン酸が周囲のpHによってタンパク質との結合を変化させることが知られていることから、EHDは細胞内のpH依存的に初期エンドソームの脂質膜ダイナミクスを制御する可能性が考えられた。 ホスファチジン酸が初期エンドソームからの輸送に必要かどうか調べるため、脂質代謝阻害剤を用いた輸送実験を行った。その結果、ボスファチジン酸への代謝阻害が初期エンドソームからの輸送を有意に遅らせることを見出した。同実験条件において、細胞内でみられるEHDのチューブ様構造が減少することを見出した。これらの結果は、初期エンドソームからチューブを介した輸送にホスファチジン酸が重要である可能性を示唆している。 細胞内pHが輸送・EHD局在に影響するか免疫染色・ライブイメージングで解析した。その結果、細胞内pHの酸性化は初期エンドソームからの輸送をコントロールと比較して有意に遅らせることを見出した。また、コントロール細胞で見られたEHDのチューブ様構造は、細胞内pHを酸性にする条件下で有意に減少した。 更に、ボスファチジン酸に結合するEHDのドメイン同定、脂質代謝阻害剤を用いたEHDの局在の解析など、その制御機構解明に向けて解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度に計画していた、ホスファチジン酸に結合するEHDのドメイン解析、EHD局在・輸送における細胞内pHの影響の解析はおおむね順調に進めることができた。しかしながら、実験系確立のための予備実験に予定以上の時間を費やした。また、細胞内pHをモニタリングする方法はまだ問題点が残されており、実験系確立のため引き続き条件検討を行う必要がある。以上のことから、順調に進展しているものの一部の実験系が予定通りに進展していないため、③とした。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた結果をもとに、in vitro実験系を用いた解析(具体的には、タンパク活性測定と脂質形成の観察)を進める。これらの実験系はすでに条件検討を進めており、このため順調な進展が見込まれる。一方、平成25年度に達成できなかった細胞内pHのモニタリング方法に関しては、2種類の蛍光タンパク質(pH感受性とpH耐性)を用いることで、その蛍光強度の差を元に細胞内pHのモニタリングを試みる。本問題の解決に必要な材料はすでに準備できているため、問題なく遂行できると考えている。
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