研究課題/領域番号 |
13J05247
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
茅根 文子 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 3倍体 / プラナリア / 有性生殖 / 配偶子形成 / 染色体削減 / 減数分裂 |
研究概要 |
本研究は、有性生殖を行う3倍体リュウキュウナミウズムシの配偶子形成過程において染色体挙動を解析し、3倍体細胞から正倍数体の配偶子が形成される機構を明らかにすることを目的としている。先行研究から、生殖系列細胞の分化のいずれかの段階で染色体が1セット削減され2倍体となることにより、減数分裂時に正常な染色体の対合・分離が可能になると予測された。本年度はこの染色体削減が起こる時期の特定を目指して研究を実施し、並行して次年度にその分子機構を解析するために用いる分子マーカーの準備を行った。 1. 染色体削減時期の特定 まず減数第一分裂前期における核相を明らかにするため、有性化した3倍体リュウキュウナミウズムシの精巣および卵巣の細胞中の染色体像を観察した。その結果、雄性生殖系列細胞は減数第一分裂に入る前に2倍体になっていることが示唆されたのに対し、卵母細胞では少なくとも減数第一分裂前期まで3倍体性が維持されていることが初めて示された。また、Rad51ホモログが卵母細胞において相同染色体の対合には必要でない一方キアズマ形成には必要であることを、RNAiを用いた機能解析により示し、相同組換えに依存しない相同染色体のペアリングの機構が存在する可能性を示唆した。 2. 染色体削減の分子機構の解明 染色体が削減される際の細胞内における挙動を観察するため、姉妹染色分体の結合に関わるタンパク質であるコヒーシンに着目した。有性化したリュウキュウナミウズムシより減数分裂特異的コヒーシンサブユニットRec8と特に相同性の高い遺伝子をクローニングし、全長配列を決定した。得られた配列からRNAプローブを作製し、Whole-mount in situ hybridizationによる発現解析を行ったところ、卵巣および精巣特異的に発現が見られた。現在、免疫染色に用いるための抗体の作製を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
配偶子形成過程の中で染色体削減が起こる時期を具体的に特定するまでには至っていないが、絞り込むことはできた。雄性生殖系列と雌性生殖系列で染色体削減の起こる時期が異なることを示せたことは、一定の成果であると考える。また、染色体挙動を観察するために用いるコヒーシン抗体の準備については、概ね計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
雄性生殖系列では減数分裂前に染色体削減が起こることが示唆されたため、分化初期の生殖系列細胞特異的に発現する遺伝子であるNanosまたはPiwiのホモログをマーカーとして生殖幹細胞や精原細胞の核相解析を行い、染色体削減が起こる時期の特定を目指す。その時期を特定できたら、染色体挙動と微小管との関連およびヒストン修飾との関連を調べ、分子機構に関する知見を得る。一方、雌性生殖系列では染色体削減は減数第一分裂中期以降に起こることが示唆されたため、減数第一分裂前期から減数第二分裂にかけての染色体挙動について、現在作製中のRec8抗体の免疫染色および市販のチューブリン抗体、修飾ヒストン抗体を用いて詳細に調べる。
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