研究課題
平成26年度は、小脳性運動障害患者の機能回復を促す刺激とリハビリテーション法の開発という当研究の目的に即して、患者で障害される下肢機能としてADLに多大な影響をもたらす歩行機能に着目した。すなわち、歩行機能に特異的な神経活動を促通できるような刺激法を考えた。tDCSの応用的刺激法の1つとしてサイナスリズム刺激がある。歩行という動作は周期的活動であり、歩行周期に合わせたリズム刺激をM1及び小脳に与えることで、小脳性運動障害における、歩行中の協調運動障害を改善させることができるのではないかと考えた。まず平成25年度にも進めていた健常者の実験をさらに発展させ、M1(下肢領域)もしくは、小脳に陽極を置いたサイナスリズム刺激を歩行周期に合わせたリズムで、歩行中に行った。陰極は後頭部におき、リファレンスとした。対照実験として、シャム刺激と歩行、サイナスリズム刺激のみを行って比較した。その結果、サイナスリズム刺激と歩行を組み合わせた場合のみ、屈筋群におけるMEP振幅が増強することが分かった。シャム刺激と歩行、及びサイナスリズム刺激のみでは、そのような変化は認めなかった。M1へのサイナスリズム刺激は、歩行機能に関わる運動学習を促通できる可能性があると考えられた。今後は小脳への歩行周期に合わせたサイナスリズム刺激を行う予定である。さらに、各刺激において下肢での小脳性運動学習が促進されるかを詳細に検討する予定である。さらに失調様歩行を呈する脳卒中患者において、歩行周期開始をトリガーとしたサイナスリズム刺激の実験を開始した。予備的結果においては、10m歩行速度の有意な改善を得た。またM1において屈筋(TA筋)にかかわる神経細胞の興奮性を高めることも分かった。当該研究に関連する論文をまとめ、投稿する予定である。
2: おおむね順調に進展している
昨年度の研究成果をもとに、新たな実験を行い、すでに結果を得ているため。具体的には、本年度は、tDCSの応用的刺激法の1つとしてサイナスリズム刺激を歩行周期に合わせて行い、歩行が同期するという興味深い結果を得た。また、サイナスリズム刺激と歩行を組み合わせた場合のみ、屈筋群におけるMEP振幅が増強することが分かった。シャム刺激と歩行、及びサイナスリズム刺激のみでは、そのような変化は認めなかった。M1へのサイナスリズム刺激は、歩行機能に関わる運動学習を促通できる可能性があると考えられた。
今後は小脳への歩行周期に合わせたサイナスリズム刺激を行う予定である。さらに、各刺激において下肢での小脳性運動学習が促進されるかを詳細に検討する予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件)
Neurosci Res.
巻: 92 ページ: 29-38
10.1016/j.neures.2014.10.004.