研究課題/領域番号 |
13J05257
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
厚見 悠 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 結合要素系 / 秩序―無秩序転移 / スケールフリー / 緩和過程 / 平均場近似 / Fokker-Planck 方程式 |
研究概要 |
本研究では、ネットワーク構造を通じて相互作用を持つ多要素系を、結合要素系という枠組みに従ってモデル化し、その挙動を解析した。具体的には、ネットワーク上で相互作用を持つ多数の「双安定系」が、秩序相から無秩序相に転移することを示すことや、秩序相での緩和過程において、他の要素との結合の本数が多い要素から順に緩和することを明らかにした。さらに、ネットワーク上の平均場近似を用いた解析により、こうした緩和が生じる理由や、全体の緩和時間のパラメーターへの依存性を示した。また、連続極限を考えることで、秩序相から無秩序相への転移におけるスケーリング則や、十分時間が経過したのちの定常状態について議論した。 これを通じて、実世界において普遍的に観測される構造である「スケールフリーネットワーク」を通じて相互作用する多要素系の、典型的な挙動の一つを予言し、スケールフリーネットワークの機能的意義に関する一定の知見を与えた。また、スケールフリーネットワーク上の挙動を端的に理解するために有効であるとされてきた平均場近似が、動的過程にも適用できることを初めて示した。 本研究の主眼はあくまで、スケールフリーネットワークの一般的特性の理解にある。しかし、本研究のモデルが、複数のコミュニティが互いに結合している状況を想定した合意形成モデルに類似していることから、実世界の現象の解析に寄与する可能性が潜在しているものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一つの研究テーマに関して詳しくまとめたが、さらなる発展研究まで及ばなかった点については不満が残るため。
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今後の研究の推進方策 |
一般企業への就職により、本テーマの直接的追求は中断することになるが、当該企業での課題である、複雑ネットワークの理論を用いた市場の分析を通じて、複雑ネットワークが持つ機能的意義の探求を継続する。
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