時間選好課題の意思決定プロセスを解明する研究:アイトラッカーという視線を追う装置を用いて、時間選好に関する質問に回答する際のプロセスを明らかにした。まったく同じ時間割引に関する一連の質問であっても、期日の表記が日数で書かれている場合は直感的に回答し、暦日で書かれている場合は悩みながら回答していることが視線の動きから明らかとなった。アイトラッカーを用いることによって、ブラックボックスとされていた意思決定のプロセスを明らかにしたことに本研究の意義がある。
幸福度と時間選好の関係を明らかにする実験研究:幸福度や感情が時間選好に影響を与えるかどうかを明らかにする実験室実験を行った。先行研究では幸福度や感情に影響を与えなかった対照群と比べて、幸福度やポジティブな感情を高めた処置群の方が時間割引率は低かったが、本研究では2つの意味で異なる結果を得た。第1に、対照群と比べて、幸福度やポジティブな感情が高くなった処置群の方が時間割引率は高かった。第2に、介入による感情の変化と時間選好に相関が必ずしもあるとは限らないことが明らかとなった。
時間選好のアノマリーを観察する実験研究:時間選好を測定する際に、Andreoni and Sprenger(2012)によって新しく考案された凸時間予算制約下での選択実験(CTB法)を用いて考察した。本研究では時間選好のアノマリーの1つである期間効果がCTB法でも観察されるかどうかを検証した。期間効果とは、直近と将来の受け取りの期間が長くなると割引率が低くなるという現象である。結果として、直近と将来の受け取りの期間が長くなっても割引率は低下はしないということが確認された。
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