研究課題/領域番号 |
13J05312
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
岩切 渉 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 特別研究員(PD)
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キーワード | TPC型X線偏光計 / 小型X線発生装置 |
研究概要 |
当該年度における研究の大きな成果は、TPC型X線偏光計に不可欠な電子のドリフト速度較正用のX線発生のタイミングが計れる小型X線発生装置の開発を行ったことである。中性子星連星を用いて量子電磁気学の非線形効果の検証を行うにはX線偏光観測が有効である。そのため、前年度中盤にNASAの予算関係で突然の中止を余儀なくされたアメリカのX線偏光観測衛星計画の再提案に向けて、これまでNASAでしか作られていなかった搭載される予定のTPC型X線偏光計を、偏光計の性能を確固たるものとするために日本で開発を行った。その中で私は較正用X線発生装置の開発を担当した。私は紫外線LEDを発生源とし、光電面を配置して光子を電子に変換した後にチャンネルトロンで増幅を行って加速させるという設計で10cm×4cm×4cm程度の小型X線発生装置の開発を行った。現在、最終調整中であり完成、評価試験を行い次第、逐次学会等で発表を行っていく予定である。 また、中性子星近傍の重力等の情報を持っているのではないかと予想される中性子星連星ヘラクレス座X-1から得られた拡がった構造を持つ鉄輝線に関して共著者として論文を発表した。さらに、日本のすざく衛星に搭載されているHXD-WAM検出器によって得られた明るい太陽フレアの光度曲線をエネルギーごとに分けて時系列解析を行い、エネルギーと光子の到来時刻の遅れの関係が~1MeV付近で変わることを発見し、天文学会で発表を行った。これは磁気ループ中での加速電子、イオンの振る舞いを示す良いプローブであり、現在論文化を進めている。そして、自身の論文である中性子星連星4U 1626-67から得られたサイクロトロン共鳴エネルギー帯域で観測された輝線構造に関する内容を天文学会の雑誌、天文月報の記事としてまとめ、より一般的な読者に向けて解説を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まだX線偏光計全体での偏光計測試験は行えていないが、個々の機器は開発が進められており、自身の担当分の較正用小型X線発生装置の調整は最終段階に入っているため、来年度の前半で全体の試験が行える予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は次の2点に焦点をあてて研究を進めていく。 1つ目は引き続き小型X線発生装置の開発を進め、成果を学会等で発表し、X線偏光計全体の試験を行っていく。これらの試験は次年度に予定されているNASAの小型衛星計画の再提案にあたって非常に重要なデータとなる。2つ目は来年度のすざく衛星の公募観測でpriority Cで採択されている4U 1626-67の観測データをはじめ、これまでに得られているすざく衛星やRXTE衛星の中性子星連星の観測データを、特にサイクロトロン共鳴構造に焦点をあてて系統的な解析を行って強磁場中におけるプラズマ内の光子伝搬過程を探る。
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