研究課題/領域番号 |
13J05318
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
澤 真理子 山口大学, 連合獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 獣医学細胞診 / 犬・猫 / 腫瘍 / 高度免疫細胞化学的診断法 / 多重蛍光抗体法 / リンパ腫 / 免疫表現型 / 形態計測学的診断法 |
研究実績の概要 |
細胞診は獣医臨床医学において必須の検査法であるが、医学細胞診に比べると著しく立ち遅れている。本研究ではイヌおよびネコの腫瘍細胞診の高度化を目的とした基礎的研究を行うことを目的とし、以下の3つのサブテーマを設定した。(1) 高度免疫細胞化学的診断法の開発:イヌおよびネコの腫瘍病理学的に有用性が知られているマーカーについて、多重蛍光抗体法やギムザ染色との重染色法など、実用性と迅速性に優れた高度診断法を開発する。また、病理組織学的診断との整合性を定量的に解析することで、その感度と特異度を評価する。(2)形態計測学的診断法の開発:ギムザ染色やパパニコロウ染色、および細胞増殖・アポトーシスのマーカーの免疫染色法を確立し、形態計測学的解析を行い、その結果から細胞診において腫瘍の悪性度評価に有用なパラメータを探索する。(3)局所病態解析:シクロオキシゲナーゼ(COX)-2と上皮間葉転換 (EMT)に焦点を当てた解析を行う。 2年目の今年度は、サンプル採取を継続しつつ、上記(1)および(2)についての基礎的実験と臨床データの蓄積を行った。サンプルは鹿児島大学附属動物病院にて外科的に摘出された、あるいは針生検等で得られた腫瘍組織から細胞診標本を作製した(未染色標本の一部は今後の解析のために凍結保存した)。高度免疫細胞化学的診断法の開発(1)については、リンパ球に対する免疫表現型の分類のための多重蛍光抗体法を確立した。本法により、約45分間と短時間でイヌおよびネコのリンパ増殖性疾患症例におけるリンパ球の免疫表現型の分類が可能となった。また、本法の臨床的な実用性を評価するため、本法で得られた結果と遺伝子クローナリティ解析の結果を比較解析している。形態計測学的診断法の開発(2)については、細胞増殖マーカーの検出法の確立と、臨床例における計測を行い、データの解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的の3つのサブテーマのうち、高度免疫細胞化学的診断法の開発(研究目的-1)については、イヌおよびネコの細胞診標本におけるリンパ球免疫表現型の分類についての多重蛍光抗体法を確立し、海外雑誌に論文が掲載され、また国内外での学会発表も行った。本研究にて開発した検出法の臨床的な有用性を検証するため、リンパ増殖性疾患症例標本への応用を継続し、データの蓄積と解析を行っている。また、イヌとネコの腫瘍細胞診におけるサイトケラチンとビメンチンの検出のための迅速酵素抗体法(Sawa et al, Res Vet Sci 2012)の臨床的実用性について、本法による結果と組織病理学的診断結果を比較し、データの解析を行っている。迅速免疫染色法形態計測学的診断法の開発(研究目的-2)については、現在、細胞増殖マーカーの検出法の確立するための実験とデータ解析を行っている。局所病態解析(研究目的-3)については該当する症例細胞診標本の収集中である。
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今後の研究の推進方策 |
高度免疫細胞化学的診断法の開発(研究目的-1)については、上記の迅速酵素抗体法により検出法を確立したマーカー(サイトケラチンおよびビメンチン)について、蛍光抗体法による多重検出を可能にするためのプロトコルを確立する。これにより、より簡便迅速かつ実用的な検出が期待される。次いで、その臨床的有用性を評価するため、様々な臨床標本へ応用し、従来の迅速酵素抗体法による検出結果を比較し、データの解析と評価を行う。形態計測学的診断法の開発(研究目的-2)については、細胞増殖マーカーの検出法を確立し、十分な症例数が蓄積され次第、結果を報告する。局所病態解析(研究目的-3)については、十分な症例数が集まり次第、基礎実験を開始する。
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