本研究では、光機能性分子における発光メカニズムや励起緩和等をナノスケールレベルで解明することを目的としている。ナノスケールレベルで励起ダイナミクスを考慮するためには、非局所励起に対する大規模計算理論が必要である。そのため、申請者は第一原理計算を用いた高精度な解析を可能とするために、大規模励起状態計算法の確立と高速化を行った。昨年度までに、従来の線形スケーリング理論では適用が困難な大規模非局所励起状態計算の確立に成功した。具体的には、分極率の極が励起エネルギーに対応するという性質を利用して間接的に励起状態を求める方法である。ただし、この計算方法では分極率の極を求めるために、周波数に対する大量の分極率計算が必要となる。そこで、Green関数法を導入することによって、各周波数に対する計算コストを削減し、更なる高速化を行った。今年度においては、高い演算性能を持つgeneral processing units (GPUs)を利用したプログラムを作成することにより、大きなボトルネックとなっている基底状態計算の高速化を行った。また、並列化効率の低い自己無撞着場(SCF)計算に対して、近似的なFermi準位を決定するアルゴリズムを導入することにより、SCF計算の高並列化に成功した。
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