研究課題/領域番号 |
13J05321
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
長井 淳 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員DC1
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キーワード | 脊髄損傷 / 軸索ガイダンス分子 / 遺伝子改変マウス / 軸索再生 / 細胞死 / 炎症反応 / 瘢痕組織形成 / 再生医療 |
研究概要 |
中枢神経系損傷に対する決定的な治療法は未だない。そのため、中枢神経系の限られた再生能力の分子機構解明が急がれている。Collapsin-response mediator protein (CRMP)の神経軸索再生過程への関与が培養細胞を用いられた実験により示唆されているが、生体内での役割は不明な点が多い。本研究は、遺伝子改変マウスを用いて、個体レベルでの中枢神経損傷後のCRMPの機能解明を目的とする。 筆者らが作製したCRMP4遺伝子欠損(Crmp4-/-)マウスを用い、脊髄損傷後の再生過程におけるCRMP4の機能検証を行った。まず、野生型(Crmp4+/+)マウスの損傷した脊髄において軸索再生阻害的・細胞毒性的CRMP4が上昇していることが示された。脊髄損傷4週間後、Crmp4+/+マウスにおいては損傷部位以降の脊髄神経軸索消失・半身不随が観察された一方、Crmp4-/-マウスにおいては神経軸索が長距離にわたり再生し、後肢に加重ができるほど運動機能が回復していることが確認された。また、損傷後の神経軸索の細胞骨格崩壊・細胞死がCrmp4-/-マウスでは有意に抑制されていた。さらに発現上昇したCRMP4は、神経細胞内のみならず、反応性アストロサイト・活性型マイクログリアにも局在していることが確認された。従来、CRMP4は神経細胞にのみ役割を持っと信じられてきたため、反応性アストロサイト・活性型マイクログリアなど脊髄損傷後の炎症・二次損傷にも関わる示唆が得られた意義は大きい。実際に、Crmp4-/-マウスにおいては炎症・瘢痕組織形成が抑制され、より神経再生に好ましい組織環境が形作られていることが示された。これらの結果は、CRMP4が軸索ガイダンスのみならず炎症・瘢痕組織形成といった二次損傷をも制御する特異な因子であるとともに、中枢神経系損傷に対する新規治療標的である可能性を提案する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
病態モデルの作成など新しい実験手技会得段階などもあったが、大きなトラブルもなく計画していた通りのタイムスパンで研究が遂行され、論文も投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は他の遺伝子改変マウスを用いた研究を進めることにより、さらに標的タンパクの機能について深く追求していく予定である。
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