研究課題
【研究計画の実施状況】昨年度までに、野生型(Crmp4+/+)に比べCRMP4 遺伝子欠損(Crmp4-/-)マウスでは脊髄損傷後の回復が顕著に促進されているという結果が得られていた。今年度はその回復メカニズムについて生化学・組織学的解析を行い、論文としてまとめて学会誌に発表した。【研究成果】損傷した脊髄において再生阻害的・細胞毒性のある CRMP4 form が神経細胞・反応性アストロサイト・活性型マイクログリア内で上昇していることが確認されたため、Crmp4+/+とCrmp4-/-間での炎症反応の違いを検討した。脊髄損傷後の炎症性細胞を観察したところ、Crmp4-/-で活性化マイクログリアの数の減少が確認された。また、Zymosan Aという炎症惹起剤を脊髄に投与したところ、Crmp4-/-でマイクログリア・アストロサイトの活性化が大きく減少し、炎症性サイトカインTNFαの分泌も抑制されていた。次に、炎症反応によって形作られる瘢痕組織を抗コラーゲンIV抗体で染色したところ、Crmp4+/+脊髄では損傷1週後で瘢痕組織が確認された一方、Crmp4-/-脊髄では瘢痕化がほとんど確認されなかった。炎症反応は損傷脊髄の組織を傷害し、瘢痕組織は物理的・化学的に神経再生を阻害しているため、Crmp4-/-マウスでの神経伸長と運動機能再生は、炎症によるダメージ・瘢痕形成が少ないことに起因していることが考えられる。CRMP4は神経細胞内でのはたらきが主に報告されてきたが、本研究は、炎症性細胞におけるCRMP4 を標的とした中枢神経系損傷に対する新規治療開発の可能性も併せて提案する。
2: おおむね順調に進展している
着実に研究結果を得ることができ、国内外の学会で発表した。また2015年2月には研究成果を国際雑誌に発表し、大学よりプレスリリースされ、国内外のメディアによって報道された。追随する研究も精力的に行っており、論文投稿準備中である。
H26年度に発表した研究成果とは別の遺伝子改変マウスを用いて、注目しているタンパク分子のさらなる機能解明を進めている。新しい解析方法を盛り込むことにより、より詳細な検証が可能になることが期待されている。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
Sci. Rep.
巻: 5 ページ: 8269
10.1038/srep08269.