研究課題/領域番号 |
13J05325
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
石田 惣平 一橋大学, 大学院商学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 保守主義 / 条件付保守主義 / 無条件保守主義 / 企業行動 / 設備投資 / 銀行借入 / メインバンク / 金融危機 |
研究概要 |
本研究の目的は、会計保守主義がもたらす経済的帰結に関して実証的に検証することにある。研究初年度である平成25年度は、次の2つの研究に着手した。 第1の研究は、"The Effect of Accounting Conservatism on Corporate Investment Behavior"(研究1)である。本研究は会計保守主義が企業の投資行動にどのような影響を及ぼすかを検証している。具体的には、(1)無条件保守主義が企業の投資行動を促進させる一方、(2)条件付保守主義は投資行動を抑制することを明らかにしている。なお、本研究はいくつかの国内・海外発表を経て"International Perspectives on Accounting and Corporate Behavior"に収録されている。 第2の研究は、「会計保守主義が企業の資金調達活動に及ぼす影響」(研究2)である。本研究では、会計保守主義が企業の資金調達活動にどのような影響を及ぼすかを分析している。具体的には、(1)企業が資金不足に直面している際、無条件保守主義の程度が高い企業ほどより多くの銀行借入を行えている、(2)企業が資金不足に直面している状況下において、条件付保守主義と銀行借入による収入との間には有意な関係がない、(3)2008年の金融危機時において、無条件保守主義の程度が高い企業ほどより多くの借入を行えている一方で、条件付保守主義の程度が高い企業ほど銀行借入を行えていない、(4)メインバンクとの関係が強固な企業ほど、無条件保守主義から多くのベネフィットを得ている、(5)メインバンクとの関係が希薄な企業は条件付保守主義からベネフィットを得ている、というものである。本研究は、第8回日本ディスクロージャー研究学会での報告を行った。 これら2つの研究は、会計保守主義が企業行動に影響を及ぼしうることを示唆しており、会計システムがもたらす経済的帰結を検討する際には、企業行動についても考慮する必要性を強調している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は国内学会2回、海外学会3回の報告を行った。加えて、"The Effect of Accounting Conservatism on Corporate lnvestment Behavior"(研究1)については"Intemational Pcrspectives on Accounting and Corporate Behavior"に掲載された。こうしたことから、平成25年度はおおむね順調に研究を進展できたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は「会計保守主義が企業の資金調達活動に及ぼす影響」(研究2)をいくつかの海外学会で報告すると同時に、その他の研究をさらに発展させていく。具体的には「金融危機時における会計保守主義の役割」(研究3)、「会計保守主義と企業の減配行動」(研究4)、「会計保守主義に対する需要と社外取締役」(研究5)である。これら研究もまたいくっかの国内・海外学会で報告し、随時公表していく。
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