研究課題
1. 御崎馬における神経伝達・ホルモン伝達関連遺伝子の多型解析宮崎県の都井岬に生息する御崎馬はヒトがほとんど手を加えない形で繁殖を繰り返してきた半野生馬集団である。本研究では、先行研究でウマ種内多型が確認された3つの神経伝達・ホルモン伝達関連遺伝子の解析をおこなった。その結果、ドーパミン受容体D4遺伝子(DRD4)ではexon3領域に1か所のSNP (G292A)が確認されたが、その対立遺伝子頻度は他の日本在来品種と差異はなかった。オキシトシン受容体遺伝子(OXTR)では、intron領域に1か所のSNP (T81A)が確認され、その対立遺伝子頻度は、他の日本在来品種と大きく異なっていた。アンドロゲン受容体遺伝子(AR)には多型は見られなかった。これらの多型が御崎馬の集団内での行動特性の個体差、また他の飼育下品種との行動特性の違いに影響を及ぼしうるか検討することが今後の課題である。2. サラブレッド馬における馴致難易度に影を及ぼす遺伝子多型の探索ウマDRD4の多型は、質問紙によって測定された行動特性スコアとの関連が報告されている。本研究では、G292Aの遺伝子型が、実際にウマの飼育・管理の難易度に影響を及ぼしているか否かを、サラブレッド種を用いて検討した。育成牧場での馴致・調教時の扱いやすさ(馴致難易度)と遺伝子型の関連を検討した。サラブレッド1歳馬の入厩、馴致、馴致後までの各段階における扱い易さ(馴致難易度)の評定値とDRD4のG292Aの遺伝子型との関連を、2年分のデータを用いて解析した。その結果、2011年度では遺伝子型との関連が見られたが、2012年度では遺伝子型の影響は見られなかった。年度によって一貫した傾向は見られなかったことから、本研究のみでは馴致難易度に遺伝子型が関連すると結論付けることはできない。したがって、他年度のデータや他の要因も含めての更なる解析が必要である。
1: 当初の計画以上に進展している
半野生馬における行動関連遺伝子の多型情報を新たに蓄積することができたのは大きな進展である。また、サラブレッド馬においては、遺伝子多型の情報のみならず行動評定のデータも取得し、多型と行動の関連を解析する段階まで研究を進めることができた。これらの点より、研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。
これまでの研究では、行動に影響を及ぼす可能性のある候補遺伝子において複数の多型を確認したほか、その対立遺伝子頻度の品種差についての情報も得られた。しかし、それらの多型と行動特性との関連を示すまでには至っていない。今後は行動評定手法をより洗練させることにより、多型と行動特性との関連を検討していく必要がある。また、これまでは主にウマを対象に研究をおこなってきなが、その他の家畜動物(イヌ、ネコなど)についても同様の研究を進める予定である。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)
DNA多型
巻: (印刷中)
巻: 21 ページ: 35-38
Journal of Equine Science
巻: 24 ページ: 31-36