研究概要 |
研究目的である, CMOS回路及びプラズモン要素素子を集積化した表面プラズモンデバイス基盤技術の確立に向け, 以下の要素技術の研究を行った. 1. 表面プラズモン要素素子(導波路・検出器)組み合わせ構造の作製及び評価 シリコンプロセスで作製したデバイスを用い, 金属表面(空気/金界面)を伝搬する表面プラズモン(以下, SPP)を, 回折格子を介し, 金属裏面(金/シリコン界面)へ結合させ, 光電流として検出する構造を実現した. 有限差分時間領域法を用いた電磁界解析より, 金属表面を伝搬するSPPは, 金属裏面への結合構造である回折格子のスリットピッチに依存し, その結合方向が制御できることを確認した. 導波路終端に回折格子を作製した場合も, 同様に金属裏面への結合が観測され, これらの現象は, 光電流を検出する実験からも確認された. 以上の結果より, 表面プラズモンデバイスの要素技術となる, 導波路検出器の組み合わせ構造が確認され, 本成果は国際学術論文に採択された. 2. 光信号伝達及び電気バイアス分離構造の作製及び評価 シリコン基板上に作製したプラズモン導波路及び検出器(ショットキーダイオード)の間に電気的な分離溝を形成することにより, 電気バイアスを印加した金属導波路上においても, SPP(光信号)が伝搬し, 光電流として検出可能であることを確認した. 電磁界解析より, 空気/金界面を伝搬するSPPは, 導波路端部で散乱し, 導波路先端から数μm隔てた先に形成された検出器からも光電流として検出されることが確認された. LOCOS酸化膜上にプラズモン導波路, シリコン基板上にショットキーダイオードを形成したデバイスを用い実験を行った結果, 検出器で得られる光電流は, 導波路に印加した電気バイアスの影響をほとんど受けないことが確認された. 以上の結果より, 一つの金属配線上で, 光信号と電気バイアスを同時に伝えられることが確認され, 本成果は国際学会に投稿している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究目標は, 1. 局在型表面プラズモンの伝搬・検出構造の構築, 2. プラズモン要素素子及び電子集積回路融合技術の確立であった. 項目1では, 電磁界解析上で, シリコン基板上の金属微粒子を介した局在型表面プラズモンの伝搬は確認されたものの, 実験で得られた光電流が, 局在型表面プラズモンに起因するものであると明確に判断するまでには至らなかった. 解析を続けた結果, 問題は, 伝搬型SPPが金属微粒子に結合する際に生じる伝搬光であることが判明したため, 今後のデバイス構造に反映する. 次年度以降への足掛かりともなる項目2では, 項目1で得られた解析・実験結果の反映もあり, 研究実績の概要で記述した成果が上げられ, 順調な進展が見られた. 平成26年度への展開と, 研究全体の進捗を考慮し, 達成度を②と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
局在型表面プラズモンの検出構造の構築を引き続き行うとともに, 本研究の目的である表面プラズモン集積回路実現に向け, 実用的な表面プラズモン要素素子の組み合わせ構造の検討を進める. 具体的には, 表面プラズモンを利用した基本論理素子の実現可能性の確認を行う. 平成25年度の研究では, 当初の予定通り導波路解析やデバイス作製の知見が得られたため, 電磁界解析による設計やシリコンプロセスによるデバイスの作製を随時進める.
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