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2014 年度 実績報告書

胎仔期バルプロ酸曝露によるマウス自閉症様精神障害発現の分子基盤解析

研究課題

研究課題/領域番号 13J05359
研究機関大阪大学

研究代表者

原 雄大  大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード自閉症 / ドパミン / 社会性行動 / 認知記憶 / スパイン / マウス
研究実績の概要

抗てんかん薬であるバルプロ酸(VPA)の妊娠期の服用が出生児の自閉症発症リスクを増大させることから、胎生期にVPAを曝露した齧歯動物が自閉症のモデル動物として用いられている。これまで当研究室では、胎生12.5日目にVPA 500 mg/kgを曝露したマウスが、生後に自閉症様の行動異常や脳組織学的な変化を示すことを見出している。本研究では本モデルマウスの自閉症様精神障害発現に関わる分子機序の解明を目的としている。前年度は本モデルマウスの前頭前皮質におけるドパミン(DA)神経系の機能低下を見出しており、当該年度は行動異常およびスパイン密度低下にDA神経系の機能低下が関与しているのか追究した。
以前に当研究室では、注意欠陥多動性障害(ADHD)治療薬であるメチルフェニデートおよびアトモキセチンを低用量で慢性投与することにより、前頭前皮質のDA神経系を選択的に活性化することを見出している。そこで、これらの薬物によるVPA曝露マウスの行動異常改善効果について検討した。両薬物の単回投与ではVPA曝露マウスの行動異常は改善しなかった。しかし、2週間の慢性投与により、社会性行動障害および認知記憶障害、さらに前頭前皮質ならびに海馬におけるスパイン密度の低下が改善した。
また、当研究室ではVPA曝露マウスの行動異常および大脳皮質の構造変化に性差があることを見出している。そこで、DA神経系の変化における性差を検討した。胎生期にVPAを投与した雌マウスではメタンフェタミンによる運動量の増加ならびに前頭前皮質のDA遊離量の増加、前頭前皮質のDA受容体の発現量について、対照群との有意差はみられなかった。
以上の成績は、前頭前皮質のDA神経系の慢性的な活性化がVPA曝露マウスの行動異常およびスパイン密度の低下を改善すること、胎生期VPA曝露によるDA神経系機能の低下には性差があることを示している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

前年度に引き続き、胎生期VPA曝露マウスにおけるドパミン神経系の変化について解析を行った。今年度は、VPA曝露マウスにおけるドパミン神経系の機能低下に関する性差、ならびに前頭前皮質の慢性的な活性化による行動異常およびスパイン密度低下の改善を見出した。これらの知見は、自閉症の病態解明ならびに治療戦略の開発に大きく貢献するものであると考えられるため。

今後の研究の推進方策

今後は、VPA曝露マウスの行動異常ならびにスパイン密度低下の改善における、前頭前皮質のドパミン神経系活性化の意義を追求していく予定である。
まず、両ADHD治療薬は、前頭前皮質のドパミンのみならずノルアドレナリンの遊離も増大させる。そのため、両薬物の改善効果に関わる神経系の特定を行う。具体的には、ドパミン受容体もしくはアドレナリン受容体に対するアンタゴニストとADHD治療薬を共処置し、各種行動試験を行う。また、今回見出したVPA曝露マウスの行動異常に対する改善効果が、ADHD治療薬特異的なものであるのか、非定型抗精神病薬などの前頭前皮質のドパミン神経系を活性化することが知られている他の薬物、もしくはドパミン受容体に選択的なアゴニストの投与による、改善効果を検討する。さらに、ADHD治療薬によるスパイン密度低下の改善に関わる詳細な分子機序、ならびに行動変化とスパイン密度の関連性についても検討を行いたいと考えている。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Chronic treatment with valproic acid or sodium butyrate attenuates novel object recognition deficits and hippocampal dendritic spine loss in a mouse model of autism.2014

    • 著者名/発表者名
      Kazuhiro Takuma, Yuta Hara, Shunsuke Kataoka, Takuya Kawanai, Yuko Maeda, Ryo Watanabe, Erika Takano, Atsuko Hayata-Takano, Hitoshi Hashimoto, Yukio Ago, Toshio Matsuda
    • 雑誌名

      Pharmacology Biochemistry and Behavior

      巻: 126 ページ: 43-49

    • DOI

      10.1016/j.pbb.2014.08.013.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 胎仔期バルプロ酸曝露は雄性マウス前頭皮質のドパミン神経機能を低下させる2015

    • 著者名/発表者名
      原雄大,高野恵利加,樽田淳樹,片芝圭亮,東野功典,吾郷由希夫,松田敏夫,田熊一敞
    • 学会等名
      日本薬学会第135年会
    • 発表場所
      兵庫医療大学(兵庫県)
    • 年月日
      2015-03-25 – 2015-03-28
  • [学会発表] 胎仔期バルプロ酸曝露マウスの前頭葉ドパミン神経系異常2014

    • 著者名/発表者名
      原雄大, 高野恵利加, 片芝圭亮, 樽田淳樹, 東野功典, 前田優子, 吾郷由希夫, 田熊一敞, 松田敏夫
    • 学会等名
      第24回日本臨床精神神経薬理学会・第44回日本神経精神薬理学会合同年会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場(愛知県)
    • 年月日
      2014-11-20 – 2014-11-22
  • [学会発表] 胎仔期のバルプロ酸曝露は前頭前皮質でのドパミン神経系の機能低下を引き起こす2014

    • 著者名/発表者名
      樽田淳樹, 原雄大, 高野恵利加, 片芝圭亮, 東野功典, 前田優子, 吾郷由希夫, 田熊 一敞, 松田敏夫
    • 学会等名
      第64回薬学会近畿支部総会
    • 発表場所
      京都薬科大学(京都府)
    • 年月日
      2014-10-11
  • [学会発表] 胎仔期のバルプロ酸曝露は成体期におけるメタンフェタミン感受性の低下を引き起こす2014

    • 著者名/発表者名
      原雄大, 高野恵利加, 片芝圭亮, 樽田淳樹, 東野功典, 前田優子, 吾郷由希夫, 田熊一敞, 松田敏夫
    • 学会等名
      第37回日本神経科学大会 Neuroscience2014
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県)
    • 年月日
      2014-09-11 – 2014-09-13
  • [学会発表] 胎仔期バルプロ酸曝露マウスのメタンフェタミン反応性の低下と前頭葉ドパミン神経系異常2014

    • 著者名/発表者名
      片芝 圭亮, 原 雄大, 高野 恵利加, 樽田 淳樹, 東野 功典, 前田 優子, 吾郷由希夫, 田熊 一敞, 松田 敏夫
    • 学会等名
      次世代を担う創薬・医療薬理シンポジウム2014
    • 発表場所
      近畿大学 東大阪キャンパス(大阪府)
    • 年月日
      2014-08-30
  • [備考] 大阪大学大学院 薬学研究科 神経薬理学分野ホームページ

    • URL

      http://molpharm.umin.jp/

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公開日: 2016-12-27  

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