研究課題/領域番号 |
13J05391
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
髙田 とも子 九州大学, 人文科学研究院, 特別研究員DC2
|
キーワード | 原子爆弾 / ヒロシマ・ナガサキ / ルポルタージュ / ジョン・ハーシー / ウィリアム・レオナルド・ローレンス / 第二次世界大戦 / ジャーナリズム / ルイス・マンフォード |
研究概要 |
本研究においては、「ヒロシマ・ナガサキルポ」の重要な著者の一人であるアメリカ人ジャーナリストJohn HerseyのHiroshimaについて、1946年の発表当時米国で巻き起こしたセンセーションの背景を3つの先行テクスト(Philip Morrison, Lewis Mumford, Federal Council of Church of Christによるルポルタージュ、及び声明文)との関係のうちに検証した。具体的には、この3つの原爆関連テクストはポストヒロシマ・ナガサキにおける米国民の状況を如実に描写したものであったと同時に、核兵器の負の側面を強調することで米国民を啓蒙したのではないかという可能性について検証することで、3つのテクストと読者との相互作用的関係を指摘した。これまでの専攻研究においては、主に歴史学的観点からHiroshimaが米国社会に与えたインパクトについて分析されてきたが、そもそもhriroshimaが如何なる経緯を経てポストヒロシマ・ナガサキの米国社会へ出現したのか、またHiroshima発表の土壌に如何なるコンテクストが存在していたのか、という点について論じた研究は十分に成されてきたとは言えない状況であった。申請者はこの状況を踏まえ、Hiroshimaというテクストに対する詳細な文学的アプローチをもって分析すると同時に、3つの先行テクストとの共通するイデオロギーを浮き彫りにするという試みを行った。本研究の遂行により、当初の研究課題の本筋でもあったところのポストヒロシマ・ナガサキにおける米国社会の文学的・歴史的コンテクストを詳細に分析することができ、今後本研究課題を進めていく上で大変大きな進歩となった。またHiroshima論に引き続き、当該年度においてはNew York Timesの科学担当記者であったWilliam Leonard Laurenceの原爆ルポルタージュについての研究も開始した次第である。米国においてはLaurenceの原爆テクストに関する歴史学的観点からの研究がなされているが、日本においては未だ十分に論じられてきたとは言えない状況であり、被爆者の視点とは対をなすLaurenceのテクストを文学的に分析することは、日米の原爆受容のあり方の差異を検証する上で非常に意義のあるものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた計画書に基づき、様々な原爆関連テクストの分析を行うことで、1946年当時の米国祉会の時代的イデオロギー及びコンテクストを検証することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は主にウィリアム・ローレンスの原爆テクストにおける原子力を神と位置付けるメタファーの意味について、主に書き手の個人的背景との関連の内に検証していく。研究にあたっては、米国国立公文書館、ニューヨーク公共図書館での資料収集を予定している。ローレンスは第二次大戦中において、米国政府より身柄を調査されていたため、本公文書館での調査は、研究課題を遂行する上で、非常に意義深いものである。
|