研究課題
次世代の環境・エネルギー技術として期待されるハイドレート技術の高度化には,ハイドレートの熱力学的な安定性やゲスト分子の占有率を決定する要因を深く理解することが不可欠である.本研究では,アルコールやハロゲン分子のような水分子との間に強い相互作用がはたらくゲスト分子において,ハイドレートが安定化するメカニズムを明らかにすることを目的とし.分子動力学法を用いたゲスト分子の運動の様子や水素結合の解析を行った.前年度に実施したフルオロメタンやブタノールを含むハイドレートの計算結果を踏まえ,本年度は異なるハロゲン原子を含むゲスト分子や,エタノールなどの異なるアルコールを包接するクラスレート水和物についても第一原理分子動力学計算を行い結果を比較した.その結果,分子の形状や大きさ,電気陰性度の違いに誘起されるゲスト分子の分布の違いや水素結合の形成され方の違いが明らかになった.ゲスト-ホスト間の水素結合の分布の違いはハイドレートのケージの構造や安定性に影響を与えており,ゲスト-ホスト間の強い相互作用がハイドレートの熱力学的な安定性に影響を及ぼすメカニズムについて知見を得ることができた.より強いゲスト-ホスト間相互作用をもつアンモニア分子を包接するクラスレート水和物についても分子動力学計算を行い,水素結合やゲスト分子の振る舞いを調べた.アンモニア分子はハイドレート内でイオン化しており,それに伴い格子を構成する水分子のプロトン移動が生じていることが示された.イオン化した分子はセミクラスレート水和物の構造を作る場合があることが知られているが,こうした構造が安定化になるメカニズムについて新たな知見を得られた.また,水素のように複数の分子がケージに取り込まれている場合や,水が重水に置き換わった場合に分子の運動や振動スペクトルが受ける影響についてもシミュレーションから明らかにした.
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Physical Chemistry Chemical Physics
巻: in press ページ: in press
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