研究課題/領域番号 |
13J05408
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松本 圭太 九州大学, 総合研究博物館, 特別研究員(PD)
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キーワード | 初期遊牧民文化 / 青銅器時代 / カラスク文化 / ミヌシンスク / 長城地帯 / ユーラシア北方草原地帯 / 金属成分分析 / モンゴリア |
研究概要 |
本研究はユーラシア北方草原地帯の東部を中心として、前1千年紀前葉における「初期遊牧民文化」の成立、展開過程のモデル化を目的とするものである。当該地域では、前2千年紀後半からは、モンゴリアとサヤン山脈を挟んだミヌシンスク盆地との相互交渉によって青銅器文化が展開、その直後に「初期遊牧民文化」が成立することが報告者の研究により明らかになっている。この相互交渉の背景についてはさらに考察の余地が存在し、「初期遊牧民文化」の広がりの背景と比較する上でもこの解明は重要である。そこで、本年度は、ユーラシア草原地帯東部の青銅器時代以後における青銅器の金属成分に着目した。具体的には、当該地域の前2千年紀前半から前1千年紀初頭における各段階、青銅器様式、地域における金属成分を、以下の項目において比較した。 1. 3種のうちどの元素を添加した合金が、各様式、型式で用いられる傾向にあったのか? 2. 元素(錫、砒素)の区別は存在したのか? 3. 各元素添加における規範の程度はどのようなものか? 成分の各データの比較は、それぞれの計測資料、方法の差異により困難を伴うが、あらかじめそれに注意した上で、より大きな傾向の把握に努めた。 結果、前2千年紀から前1千年紀初頭にかけての青銅器の金属成分において、青銅器の形態、鋳造技法からみた様式動態と大きく矛盾しない様相が本年度の研究では看取された。つまり、当該地域の青銅器様式では、青銅器の形態、鋳造技術、合金がおおよそ連動して変化している可能性がある。このことは、従來、青銅器の形態から主に行われてきたモデルを検証するとともに、青銅器の原料とその調達についても示唆するところがあると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属成分分析のデータ比較方法に問題を残すものであるが、おおよその傾向が把握でき、従来の青銅器様式動態との対比が可能になった点、また、学会にて成果の一部を報告できた点により、計画はおおむね順調に進行していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、ユーラシア北方草原地帯における前1千年紀前半の「初期遊牧民文化」自体の青銅器について集成および実見調査を進め、これ以前の時期と比較可能な形にモデル化していく。さらに、前2千年紀から「初期遊牧民文化」にいたる青銅器文化変化の背景として、当時の社会動態に注目する必要がある。そのため、各地域で墓地分析を行う準備を進めている。
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