本年度において以下の二種類の研究を行った:(1)四次有理曲線に関して有理連結な曲面の研究,(2)ファノ多様体のピカール数に関する研究. (1)は四次有理曲線の族Fに関して有理連結な(すなわち,一般の二点がFに属す曲線で繋がれるような)多様体に関する研究である.最も単純な例として射影空間が現れるため,本研究課題に深く関連する.前年度に本研究代表者は,特殊な曲面(次元が2の多様体)の場合として,(a)直線で覆われる場合,(b)直線で覆われずFが一般非分裂でない場合,それぞれにおいて分類を与えた.本年度においては,残りの場合,すなわち直線で覆われずFが一般非分裂である場合において分類を与えた.したがって,本研究により四次有理曲線に関して有理連結な曲面を完全に分類することに成功した. (2)は以下の予想に関する研究である:予想A「任意のファノ多様体(豊富な反標準直線束を持つ多様体)に対して,nを次元,iを擬指数,ρをピカール数としたとき,ρ(i-1)≦nが成立し,等号成立は射影空間の直積の場合に限る.」ファノ多様体は代数幾何学の多くの分野で研究対象とされており,予想Aはそれに関する有名な向井茂氏による予想を精密化した重要な未解決問題である.射影空間の特徴付けの一般化ともみなすことができ,本研究課題において枢要である.予想Aについての先行研究は膨大であり,n≦5については正しいことが知られている.本研究代表者は,未解決であるn=6の場合を研究した.一般に,ファノ多様体上の一般の二点は,ある種の極小性を持つ有理曲線の鎖で繋がれることが知られているが,本研究代表者はその鎖の長さに着目し,鎖の長さが3以下のときにはn=6の場合の予想Aが正しいことを証明した.
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