研究概要 |
本研究では、近年盛んに研究されている自発的脳活動を含めた情報処理の様式を、"memories as bifurcations"という新しい枠組みの元で調べることを目的としている。 具体的には申請書において以下の二つの研究の方向を提示した。1. 今まで用いたモデルの低次元化による数理構造の理解。2. 具体的な系への応用。これら二つの成果について本年度実績を述べる。 1. 低次元化による数理構造の理解 : 本年度は最初のステップとして以前提案したモデル(Kurikawa and Kaneko, EPL, 2012)に対して、amari-maginu法、self-consistent signal noise analysisなどの既存の平均場を用いた解析を適応した。しかし、本モデルにおいて重要な役割を果たしている外場の取り扱いが難しく、現在この点を克服すべく、重点的に解析を行っている。これらは学習過程がないモデルであるが、学習があるモデルの数理構造を解析するために、先に提案した(Kurikawa and Kaneko, PLoS Comput Biol, 2013)単に一度学習するモデルを改良し、繰り返し学習モデルを構築した。これにより、本研究の芽的である入力による分岐構造と自発活動・誘起活動のつながりがより明瞭になりつつある。現在はこの構造のいくつかの平均場法による解析を試みている。 2. 具体的な系への応用。 申請書では海馬への応用を目指すとしたが、以前のモデルは発火頻度ニューロンを用いた極めて抽象的なモデルであったので、ここではまずその前段階としてスパイクニューロンを用いた系への応用を試みた。この解析により、より現実的なネットワークでも、以前に提出した我々の抽象的なモデルの振る舞いを定性的に再現できることを確認した。この成果をまとめて、Neural networks誌に投稿中である。
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