研究課題/領域番号 |
13J05427
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岩崎 晋弥 九州大学, 大学院理学研究院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 有孔虫 / X線CT / 炭素循環 / 最終氷期 / 殻密度 / 炭酸イオン / 炭酸塩 / 溶解プロセス |
研究概要 |
本研究は最終氷期に大気CO_2濃度低下分の炭素が海洋深層に貯蔵されていたことを証明するため、有孔虫殻の溶解量を利用して深層水[CO_3^<2->]を定量的に復元することを目標としている。そこで本研究ではマイクロフォーカスX線CTスキャナ(以下MXCT)を利用した有孔虫殻の定量的な殻密度測定を新たな手法として提案した。平成25年度は実施計画で予定していた溶解実験を行い「有孔虫殻内部構造の観察と殻密度分布の解明」および「炭酸塩に不飽和な環境における有孔虫殻の溶解プロセスの解明」という二つの課題に取り組んだ。 実験では溶解前の浮遊性有孔虫殻(Globigerina bulloides)を160個体拾いだし、同サイズの有孔虫殻40個体を選定した後、東北大学でMXCTによる殻内部構造と殻密度分布の測定を行った。次に選定した有孔虫殻を用いた溶解実験を海洋研究開発機構で実施し、溶解させた有孔虫殻の内部構造と密度分布を再びMXCTにより測定した。 上記の実験により溶解前後の殻内部構造と殻密度分布の変化が比較可能となり「有孔虫殻の内部構造と殻密度分布」および「有孔虫殻の溶解プロセス」について以下の成果が得られた。MXCTによる有孔虫殻内部構造の詳細な観察は本研究が初めてであり、殻密度の異なる2層構造を持つことが明らかになった。またこれまで不明であった内部構造に基づく溶解プロセスが明らかになった。特にMXCTによって示される殻密度の頻度分布(CT値ヒストグラム)の形状が溶解前後で変形することが示され、CT値ヒストグラムが有孔虫殻の溶解指標として応用できることを提案した。この成果はMXCTが氷期の[CO_3^<2->を復元する上で鍵となる定重的な炭酸塩溶解指標として有効であることを示しており、今後の発展が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究でX線CTスキャナを用いた手法が炭酸塩の溶解量を定量的に示す溶解指標として有効であることが示されており、おおむな順調である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は実験水槽内の有孔虫殻の溶解について研究し、X線CTが溶解指標として有効であるという成果を得た。そこで今後は、実際の海底堆積物における有孔虫殻の溶解量をX線CTにより測定し、現場海水の炭酸イオン濃度との比較を行い、炭酸イオン濃度を定量的に復元する換算式の構築を目指す。堆積物試料は赤道太平洋で採取された表層堆積物試料(マルチプルコアラーにより採取)を利用する。その際これまでの研究で利用した浮遊性有孔虫種G. bulloidesは赤道城には生息しないため他の種(主にG. sacculifer)を用いる。そこでG. bulloidesで実施した溶解実験を基礎に他種を用いた溶解指標を作成する。溶解実験ならびにMXCT測定は平成25年度に引き続き海洋研究開発機構および東北大学において実施する。
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