研究概要 |
本研究は、制御工学を足がかりとして「経カテーテル的腎臓交感神経焼灼術」の循環調節異常是正効果を検証し、治療機序の解明を行うものである。種々の循環器疾患に伴い変容した循環調節機能は、動脈圧反射の特性のもとに、自律神経活動および体血圧の変化として現れることが知られている。詳細な動脈圧反射解析のために、我々は体血圧とは独立した圧入力を頚動脈圧受容体に加え、交感神経活動および体血圧の変化を測定する実験系(開ループ実験)を確立した。 麻酔下の自然発症高血圧ラット(SHR)、正常血圧ラット(WKY)、フェノールを用いた腎除神経を施行されたSHR (RD-SHR)に対して、頚動脈圧受容体を体循環から切り離し、同部位にサーボポンプにより任意の圧入力を行った。その他の反射を除外するため、迷走神経は頚部で切離した。同時に、腹部内臓交感神経活動と体血圧を計測し、頚動脈圧(CSP)と交感神経活動(SNA)の関係を中枢弓、交感神経活動と体血圧(AP)の関係を末梢弓として記述した。 WKY, SHR, RD-SHRいずれも、CSPの上昇に対してシグモイド曲線状にAPの低下が認められた。末梢弓に関しては、SNAとAPの関係はいずれもリニアな関係にあり、それぞれの傾き、切片ともグループ間の有意差は認められなかった。一方、中枢弓に関しては、CSPに対するSNAの変化はWKYに比べてSHRで大きく、WKYとRD-SHRとの間には有意差は認められなかった。中枢弓と末梢弓との交点により求められる動作点のAPはそれぞれ、WKY111.3±4.4mmHg, SHR145.1±5.7mmHg, RD-SHR136.6±6,9mmHgであった。 以上の結果から、腎除神経には血圧とともに交感神経活動を低下させる効果があることが明らかになった。その際末梢弓の特性には変化はなく、中枢弓の左方シフトによる降圧効果が主体であった。
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