研究課題/領域番号 |
13J05477
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高木 悠花 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 浮遊性有孔虫 / 光共生 / 共生藻 / クロロフィル蛍光測定 / 古生態 / 炭素・酸素安定同位体比 |
研究実績の概要 |
平成26年度は,まず前年度行った飼育実験のデータ解析を行い,浮遊性有孔虫の成長,共生藻類の増殖(クロロフィル濃度の増加),光合成生理状態の変遷(FRR測定により得られる生理パラメータの変化)について,Globigerinoides sacculiferとGlobigerinella siphoniferaの2種間の違いをまとめた.その成果は,現在国際誌に投稿中である.また,同時期に実施した,Gs. sacculiferについての栄養塩実験(海水中の栄養塩濃度と,宿主に与える餌をコントロールした実験)の結果を解析したところ,共生藻類(Pelagodinium beii)の光合成能は,宿主が飢餓状態であっても高く維持されていることが明らかとなった.本結果は予想外のものであったが,浮遊性有孔虫の共生関係の本質に迫る非常に興味深い現象であると思われた. 本研究課題では,最終的に殻体に記録される炭素同位体比の変化を,光合成の変化と合わせて定量的に評価するという最終目的があるため,FRR測定で得る電子伝達に関する情報と,炭素固定に関する情報を関連付けておく必要がある.そこで,当初の計画にはなかったが,放射性炭素(14C)をトレーサーとした炭素固定の実験を開始した.ここでは,FRR測定した個体を即座に14C実験に供し,同一個体について光合成の上流(電子伝達)と下流(炭素固定)の関係性を見ることができた. また本年度は,前年度未実施であった,チャンバー形成個体の安定同位体比分析を実施した.以前飼育したGs. sacculiferとGn. siphoniferaについて,成長段階ごとに1個体を6分割した試料を測定し,同位体組成のデータを得ることができた.データは現在解析中である.今後,FRR測定による光合成のデータ,14C実験による炭素固定のデータと突き合わせ,順次まとめていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き研究航海への参加,また定期的なサンプリング航海の実施など,計画通り,フィールドワークと室内実験を並行して研究を遂行している.また,新たな試みとして,放射性炭素をトレーサーとして用いた炭酸固定実験を実施し,一定の成果を得ている.一部の成果は国際学会でも受賞するなど,対外的な評価も得ている.
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず,放射性炭素同位体をトレーサーに用いた炭酸固定実験の追加実験として,単離した共生藻培養株について実施することを計画している.平成26年度に実施した,共生状態での炭酸固定との比較が可能であるため,これを行うことによって,共生体として存在する藻類が利用する炭素の経路をおおよそ推定することが可能になると期待される.なお,単離株は既に保有し,維持中であるため,本件は予定通り遂行可能であると考えている.また,これまでの飼育実験を通して得られた,浮遊性有孔虫の成長に伴う光合成パラメータの変化と,その期間中に形成された殻体の安定同位体比の関係性を明らかにしていく.
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