研究課題
昨年度までに、大腸炎抑制効果の高い菌株(BN株)は大腸上皮のβ-cateninシグナルを活性化することで上皮の修復を促進することを示した。一方、このようなβ-cateninシグナル活性化によるcyclin D1やc-mycの発現亢進は、大腸癌などのがん細胞増殖に寄与する。そこで、大腸癌モデル動物にBN株を投与した際、大腸癌に及ぼす影響を解析した。アゾキメタンをマウスに腹腔内投与後、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を自由摂取させ、大腸癌を誘発した。また試験期間中BN株を毎日経口投与した。その結果、体重減少や生存率などの指標についてはBN株投与により若干の抑制効果がみられたが、有意な差は確認されなかった。また、大腸癌の数、サイズについてもBN株投与による影響はほとんどみられなかった。また、DSS誘導性大腸炎の発症初期におけるBN株の作用を検討した。DSS投与後の宿主の変動について、腸管透過性の亢進、上皮細胞のアポトーシス亢進、およびCD11b+細胞(好中球を含む)の大腸組織への浸潤を経時的に観察した。その結果、DSS投与3日後から腸管透過性の亢進が確認された。一方、このタイムポイントにおいて、上皮細胞のアポトーシスおよびCD11b+細胞の浸潤は確認されなかった。また、ZO-1およびOccludinの発現量をWestern blotで解析したが、DSS投与3日後の大腸において、これらのタンパク質の発現量に変化はみられなかった。一方、各タンパク質の局在を解析した結果、ZO-1およびOccludinの局在がDSS投与3日目に変化していることが明らかとなった。さらに、BN株の投与によりこれらの局在変化は抑制され、腸管透過性の亢進も抑制された。以上の結果から、BN株は大腸炎初期におけるタイトジャンクションタンパク質の局在変動を抑制し、上皮の恒常性を維持することが明らかとなった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Scientific Reports
巻: 5 ページ: 15699
10.1038/srep15699