研究課題
自己抗体は腫瘍マーカーとして特に早期発見が期待されているが、現状では報告の大半が腫瘍組織及び細胞に焦点を当てており、腫瘍間質には着目していない。Micke Pらが報告[Micke P et al. Lung Cancer 2004 ; suppl 2 : S163-S175]しているように、腫瘍細胞は自身単体だけではなく、周りを取り巻く微小環境を構成する血管内皮細胞や腫瘍関連線維芽細胞等と密接に連携して増殖している。平成25年度は肺癌患者3例の組織及び血清を対象とし、プロテオーム解析により、多数の自己抗体を検出した。免疫染色の結果、特に腫瘍問質のみに局在する抗原に対する自己抗体も獲得することができた。本年度の研究は、腫瘍の浸潤や転移を早期に発見、又は術後の再発や転移を予測できる可能性がある。次年度にあたる平成26年度は本年度に獲得した自己抗体の血中濃度を測定し、臨床データとの相関を深く検討し、臨床応用に近づけるべく研究を行っていく予定である。以上平成25年度の成果は、ヒトプロテオーム研究の中枢であるHUPO主催の国際学会であるHUPO 12th Annual World Congressにて示説発表を行い、海外の研究者と活発に議論を交わした。また病理学の大規模な学会である日本病理学会にも参加し、本研究に対する有益なアドバイスをいただくことができた共に、多くの先生方と活発な討論を行うことができた。さらにここまでの成果に関してはBiomedical Research誌へ投稿し、受理された(Kobayashi M et al. Biomed Res 2014 ; 35:133-143)。
1: 当初の計画以上に進展している
平成25年度の交付申請書に記載した実験計画にて計画した全ての工程を計画通り施行することができた。さらに本年度検出することができたAnnexin A2については、肺癌患者と健常者で自己抗体の持つエピトープが異なる可能性も考えられたことから、本年度の研究は計画以上に進展したと考えている。
今後は平成25年度に検出、着目した4種の自己抗原について、多数例の肺癌患者及び健常者血清中の自己抗体相対濃度を測定する。その際、癌患者と健常者で自己抗体の認識するエピトープが異なる可能性が考えられたことから、抗原タンパク質は合成したものと腫瘍細胞より抽出したものの2種を用いる予定である。尚、上記実験に際しては手技・方法は全て確立しているため、遂行上の問題点は無い。
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Biomedical Research (Tokyo)
巻: 35 ページ: 133-143
