研究課題/領域番号 |
13J05567
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
諸藤 達也 京都大学, 工学研究科, 特別研究員DC1
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キーワード | 電解酸化 / ラジカルカチオン / アミン / イミダゾール |
研究概要 |
芳香族化合物の芳香環上やベンジル位に窒素が導入された化合物は天然物、医薬、配位子など様々な用途がある。そのためそれらの化合物を効率よく合成する手法を開発することは有機合成化学の重要な課題といえる。この課題に対し本研究者は電解酸化による新規窒素官能基導入法の開発に取り組んでいる。電解酸化により発生させたラジカルカチオンを経由しカチオン性の化合物を得た後、化学反応を集積化することで従来では達成困難な分子変換が可能になると期待できる。まず本研究者は電解酸化を用いたC-H結合の官能基化による芳香族化合物への窒素官能基導入法の開発にとりくんだ。その結果、電子豊富な芳香族化合物をピリジン存在下に電解酸化することによりアリールピリジニウムイオン中間体を得、これをピペリジンと反応させることにより芳香族第一級アミンが効率よく生成することが分かった。芳香族化合物をアミノ化する代表的な手法であるニトロ化・還元法ではしばしば官能基許容性が問題となるが、本手法は極めて温和な条件で反応が進行するためア広範な官能基が許容であり対応する生成物を高収率で与えた。また本手法を用いてVLA-4阻害薬を従来法より短ステップ、高収率で合成し、本手法が有機合成における新しい合成ルートを与えることを明らかにした。さらに本研究者は電解酸化を用いたC-H結合の官能基化によるN置換イミダゾールの合成法の開発にとりくんだ。その結果、芳香族化合物をメシルイミダゾール存在下に電解酸化することによりイミダゾリウムイオン中間体を得、これをピペリジンと反応させることによりN-芳香族置換イミダゾールを合成できることを明らかにした。これらの手法は従来の手法では難しい合成ルートを可能にすることから有機合成における強力なツールとなり得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
電解酸化により発生した芳香族ラジカルカチオン種を経てカチオン性中間体を得た後、化学反応により目的の生成物を得るという形式の反応を論文で二報発表した。また生理活性物質の合成にも応用しており、当初の計画以上の速さで進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は炭素-炭素結合を出発として、本年度炭素-窒素結合形成へと拡張された。今後は本研究を炭素-酸素結合形成や炭素-硫黄結合形成に応用し、更なる合成ツールの確立を目指す。また、これまでは低分子の合成手法開発として本研究を進めてきたが、今回達成された素反応を高分子合成に応用していきたいと考えている。
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