研究概要 |
平成25年度は当研究課題を達成するための要素技術として, 以下に示す3点の手法の開発を行った. 1. 測位衛星が樹木に遮蔽された場合の誤差調査 形状が複雑で幾何学的なモデル化が困難な樹木に対して, 三次元点群情報を用いて樹木葉量を定量化することで, 従来困難であった樹木による誤差の定量的な評価手法を提案し, 樹木葉量が誤差に与える影響の調査を行った. 樹木による誤差の高精度なモデル化が実現すれば, 道路に覆うように成長する街路樹が多数存在する都市部環境下における測位の高精度化が期待できる. 2. 魚眼カメラを用いた障害物に遮蔽された衛星を判別する手法の開発 障害物に遮蔽された衛星(NLOS衛星)は重大な誤差が生じるため, その判別手法が求められている. そこで, 魚眼カメラを用いたNLOS衛星判別手法を提案した. 具体的には, 魚眼カメラで撮影した移動体の天頂画像を, 色情報を用いてクラスタリングし, 特徴点追跡によって移動量の多いクラスタを判別することで, 天頂画像の障害物領域として識別する. 同時に, 測位衛星の位置を天頂画像に投影し, 障害物領域に存在する衛星をNLOS衛星として判別する. 本手法は, 容易にNLOS衛星を判別しすることができるため, 衛星遮蔽環境下における衛星測位の普及に貢献する. 3. 準天頂衛星を利用したマルチGNSS複合測位の利用性と測位精度の向上 衛星遮蔽環境下における衛星数の増加を目的として, 従来, 複数の測位衛星システム(GNSS)を利用する, マルチGNSS複合測位が広く研究されている. しかし, 従来各GNSSに主衛星を定義する必要があったため, 十分な衛星数増加効果が得られていなかった. そこで, 準天頂衛星を唯一の主衛星として定義し, さらにLEX信号を測距に利用する新しい測位手法を提案することで, 十分な衛星数増加効果が得られるマルチGNSS複合測位を実現し, 測位の利用性と精度の向上を実現した.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は, 平成25年度の成果の統合と, 各手法の改良を図る. 具体的には, 9章 研究実績の概要で示した手法1に関して, 樹木とマルチパス誤差の関係の調査データの蓄積と樹木葉量モデルの精査を行う. また手法2に関して, 魚眼カメラに追加でレーザ点群情報を使うなどして, 障害物領域識別のロバスト性の向上を図る. 手法3に関して, 都市部での移動体試験を行う. 移動体での本手法の運用において, カルマンフィルタを適用することで, 測位のロバスト性の向上を図る。以上によって, 衛星遮蔽環境下における高精度測位の手法構築を図る.
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