研究課題/領域番号 |
13J05572
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
河村 彩 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 特別研究員PD
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キーワード | 構成主義 / 生産主義 / ロシア・アヴァンギャルド / ロトチェンコ / リシツキー / プロウン / ソヴィエトグラフ雑誌 / 建設のソ連邦 |
研究概要 |
当該年度は1構成主義の芸術家アレクサンドル・ロトチェンコと生産主義の研究、および2構成主義の芸術家エリ・リシツキーについての調査・研究を行った。 1は博士論文執筆時より継続して研究しているテーマであるが、2014年度に書籍として出版するにあたり、追加調査および加筆修正を行った。当博士論文は革命期ソヴィエトの芸術家アレクサンドル・ロトチェンコについてのモノグラフであるが、生産主義理論に焦点を当てることにより、ロトチェンコによる社会主義杜会の生活建設という新たな側面を明るみに出す研究である。当該年度は博士論文の執筆時には参照しきれなかった資料を新たに調査し、生産主義の理論家であるポリス・アルヴァートフ、ニコライ・タラブーキン、ヴィクトル・ペルツォフ、ボリス・クシネルらの理論に関してさらなる考察を行った。 2に関しては当時の美術雑誌に発表されたリシツキーの理論や彼がデザインした書籍の一部に関して国内に所蔵されているものを中心に調査うと同時に、先行研究の調査や過去に開催されたリシツキーの展覧会についての調査を行った。2014年3月にはオランダおよびドイツに出張し、アムステルダム市立美術館、ハーグ市立美術館、ユトレヒトのシュレーダー邸にてオランダの芸術グループ「デ・ステイル」およびリシツキーとの交流について調査し、ベルリンのバウハウス・アーカイヴ・ミュージアムとデッサウ・バウハウスではバウハウスにおける構成主義の影響に関して調査を行った。またベルリン・ギャラリーでは再現されたリシツキーの「プロウン・ルーム」について調査を行った。以上のようなリシツキーのヨーロッパでの活動に関する研究は、構成主義がロシア国内のみならず、同時代のヨーロッパの前衛芸術家たちと国際的なネットワークを持ちながら展開した事実を明らかにするものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は生産主義の理論の十分な考察を行った点、そしてエリ・リシツキーに関して研究の土台となる一次資料に多く当たることができたという点から、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの調査を研究成果としてまとめ、日本ロシア文学会、表象文化論学会、中・東欧研究国際協議会等にて口頭発表することを予定している。また上記学会の学会誌へ論文を投稿することを予定している。 エリ・リシツキーのヨーロッパにおける活動およびヨーロッパの前衛芸術家との交流に関する調査を継続して行う。そのため今後はフランス、スイスへの出張、および今回調査しきれなかった都市を訪問するためドイツへの再出張を予定している。 さらに先行研究からインフク(芸術文化研究所)、ヴフテマス(高等芸術技術工房)など構成主義および生産主義の中心となったモスクワの芸術機関に関する調査を新たに行う。この調査によってロシア現地での一次資料の調査が必要となった場合には、モスクワに出張し、国立レーニン図書館等での調査を予定している。
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