当該年度は博士論文を基にしたアレクサンドル・ロトチェンコに関する書籍『ロトチェンコとソヴィエト文化の建設』を出版した。出版にあたって、主としてロトチェンコの最晩年の油彩画について調査と考察を重ねて加筆を行い、本文全体の推敲、校正を経て本書を完成させた。 またロトチェンコと並んで構成主義の重要な作家であるエリ・リシツキーについての調査を行った。昨年度ベルリンでの調査をもとに、今年度は独・英・露語の先行研究を参照し、さらにリシツキーについての調査と考察を行った。9月に沖縄県立芸術大学で開催された露光研究会では、リシツキーのブック・デザインと展示会場のデザインの共通性に関して、受容者の運動と造形の変化という観点から「壁とページ」と題する発表を行い、調査の成果を公開した。現在ロシア構成主義に関する書籍の出版を計画しているが、この発表を基にリシツキーに関する一章を執筆した。またリシツキーがドイツ語およびロシア語で発表した芸術論およびデザイン論のリストを作成した。このリストを基に、ロシア構成主義の書籍・デザイン論の翻訳論集を出版することを計画している。 さらに、もうひとりの重要な構成主義作家としてグスタフ・クルツィスの調査に着手した。当該年度は主として先行研究を参照し、不明な点の多いクルツィスの生涯と制作を把握することにつとめた。これまでの調査によって明らかになったことを「グスタフ・クルツィス――プロパガンダの革命家」と題する記事にまとめ、オンライン・ジャーナル上で公開した。
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