研究課題/領域番号 |
13J05574
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
古川 史也 宮崎大学, 農学部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 糖新生 / 卵黄 / 発生 / アミノ酸 |
研究実績の概要 |
前年度までの本研究によりゼブラフィッシュ幼生では卵黄嚢及び肝臓により糖新生が活発に行われていることが示唆されている。この糖新生と環境適応の関係について明らかにするため、受精3日後のゼブラフィッシュ幼生を様々な環境に曝露した結果、酸性ストレスに応答して肝臓の糖新生律速酵素遺伝子pck1の発現が上昇することが明らかとなった。ゼブラフィッシュでは成魚の鰓や幼生の体表面に点在する塩類細胞の一種であるH+-ATPase-rich cell (HR cell)に、Vacuolar-Type H+-ATPase (V-ATPase)が体外側の膜に発現しており、ATPの加水分解によるエネルギーを使って酸の排出を行うことが知られている。環境の酸性化などにより体内が酸性側に傾くと、このV-ATPaseの活性を速やかに上昇させることで、体内のpHを一定の範囲に維持している(酸塩基調節)。本研究では、pck1をノックダウンした結果、酸性環境に曝露しても、通常みられるはずのHR cellにおける酸排出能力の活性化が見られなかった。一方、この影響は卵黄中にグルコースを注入することでレスキューされた。続いて、Pck1経由の糖新生にはアミノ酸が材料となることが考えられたため、ゼブラフィッシュ幼生を酸性環境へ曝露した後の体内アミノ酸含量の変化を調べた。その結果、グルタミン及びグルタミン酸含有量が急激に減少しており、さらに同時期に肝臓のグルタミン酸デヒドロゲナーゼの発現量が酸性環境で上昇していることが分かった。以上の結果から、酸性環境では 1) グルタミン及びグルタミン酸が分解され、a-ケトグルタル酸となりクレブス回路へ入る 2) クレブス回路のオキサロ酢酸がPck1により糖新生経路に入る 3) グルコースがHR cellによる酸排出を促進するということが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、前年度までの研究と並行しつつ、糖新生と環境適応の関係性について調べた。前年度までは糖新生のメカニズムに焦点を絞って研究を行っていたが、遺伝子ノックダウンに用いるモルフォリノオリゴの不調や、更に予備実験として行ったいくつかの実験のうち、酸性環境が糖新生律速酵素の遺伝子発現を顕著に上昇させたことから、上記のような研究の方向性の変化を生じた。予想外の事が多くあったが、重要な現象である酸性ストレス下の糖新生について、その役割や詳細なメカニズムについて明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、初年度に行っていた糖新生の詳細なメカニズムを明らかにすべく、遺伝子ノックダウンによる解析を行うシステムの立ち上げを行っている。また、発生のごく初期においてグリコーゲンの減少が見られたため、卵母細胞中でのグリコーゲンの蓄積についても、その詳細なメカニズムの検討を行っている。また、モデル魚であるゼブラフィッシュのみならず、宮崎県で利用可能であり、かつ水産資源として重要なサクラマスについても、発生初期の卵黄代謝について検討予定である。
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